「こんなにも不可思議な構成で運命を描き出した怪作」運命は踊る ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなにも不可思議な構成で運命を描き出した怪作
こんなタイプの映画は初めて観た。宣伝のチラシには本作が並外れた映画であることが記され、現にヴェネツィアでは審査員グランプリを獲得するほど激賞された作品だ。
正直言って、私にはこれが傑作なのかどうかは判断つきかねるところがある。むしろ、評価や満足などの「人の手によるラベリング」の域を超えて、不気味に体内へと侵食してくる映画のように思えてならなかった。
これまでにも「運命」というものを捉えた芸術作品は星の数ほどあったろう。しかしそれをこんなに特殊なカメラワークと構成、リズムとテンポ、語り口で描き出してしまうことに、胸の内側が静かに沸騰させられた。何よりも、眼前に生贄のごとく吊るされた運命を、これほど俯瞰して見つめた作品は他にないと思うのだ。近隣の国や地域と衝突を繰り返すイスラエル。だがこの映画は、宗教や政治、主義、主張、その全てを超えて、世界の共通言語として受け止められる。そう強く思った。
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