「原作未読、映画だけ観た感想です」IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 kanaさんの映画レビュー(感想・評価)
原作未読、映画だけ観た感想です
前作と今作と観ました。
原作を読んでいないので、映画だけ観た感想です。
"全てがわかる"ということで、私なりに解明した結果を書きたいと思います。
この映画には二面性があると感じます。
まず第1点目、"ペニーワイズ"という迷信に子供たちが真の意味で打ち勝ち、成熟する物語。
前作は、結論から言うと、負け犬の烙印を押された7人の子供達が"パニーワイズ"という悪役を撃退し絆を深める話。子供たちの様々な体験や家庭状況が描写されています。
今作は前作を踏まえて、27年ぶりにルーザーズクラブが集結するというもの。マイク以外はデリーを出ていました。
27年ごとに大事件が起こる、といった奇妙な街が舞台でしたが、その事件を巻き起こす元凶はペニーワイズです。しかし、何故27年ごとなのか?これには様々な要因があると思いますが、政治・国際情勢に左右されて社会が大きく変わる周期が27年ということにします。つまり27年に一度、社会が不安定になることで犯罪が増加したり、全社会を巻き込む大きな変化が起きたりする。その際に犠牲になるのは子供たち。彼らは、未熟ゆえにその原因を"ペニーワイズ"という得体の知れない不気味な存在のせいだ、という事にしているのです。
根拠は大人にはペニーワイズが見えない事、子供たちが下水道や暗闇の中でペニーワイズやゾンビなどを見る事でしょうか。
前作ではそういった不気味な存在を認知し、倒しに行きましたが、結局消し去ることはできなかった。これは彼らがペニーワイズの存在を幻か現実かの区別を最後までつけられない中で、打ち勝つ努力をしたものの、未熟さゆえに正体を解明できなかったのだと思います。
今作ではスタンを除く一人一人が、思い出の場所に出向き、記憶を探り出してますよね。そして前回とは異なる様々な不気味な体験をしています。これは彼らがまだ大人になりきれていない、または過去のトラウマ(これが有力)によりペニーワイズやゾンビといった非現実的な存在に出会う幻を見るのです。実際に気付くと目の前には何もいないので、彼らは27年経っても論理や科学など現実的に実証できないものを信じている事になります。
彼らがこういった体験するのには理由があります。ずばり家庭環境です。エディーは過保護な母子家庭、ビルは弟を失い父親からその存在自体消された家庭、マイクは両親が薬物中毒(と言われています)、ビバリーは虐待する父子家庭、リッチーは外でゲームばかりする元気少年のように見えますが育児放棄などの問題ある家庭だとします。またベンは本当はロック歌手が好きだけども、大衆の娯楽を制限される家庭で、図書館で勉強ばかりしているのだと感じました。
しかしベンは本を読むのが大好きで、デリーの歴史を勉強するのに熱心なのにも拘らず、何故得体の知れない存在を信じるのか?それは前作の地下で体験した出来事からステレオタイプに支配されたのだと思います。トラウマになったのでしょう。
今作での話の根幹部分はこういった過去の体験を打ち破る事がメインではないでしょうか。最終的に、マイクが文献で調べたり先住民から聞いたりしたオカルト的なまじないでもペニーワイズに勝てませんでした。むしろルーザーズクラブは幻想(実際には地下で溺れるなど自然の力?)を見る事になります。何故再び幻を見たのか説明がつきません。これは"ペニーワイズ"という存在に立ち向かう方法が非現実的であったからだと解釈しています。子供時代は勇者のように力で立ち向かう、という子供らしい方法でした。しかし27年後はマイクの調べたオカルトにすがる、というもの。どちらも現実的ではありません。なぜならペニーワイズという非現実的なものを説明するのに、非現実を当てはめたのでは、幻のままになるからです。
結局"ペニーワイズ"を撃退した方法は、彼をただのピエロ、おばあちゃんやお父さんなど各々のトラウマだと決め付けることでした。これがやっと存在を幻だと判断した時です。つまりルーザーズクラブは実体のない者の存在を否定し、成熟したのです。
これはエンディングであるマイクの両親が漏電による火災事故で亡くなった、という記事が載っていたシーンと繋がり、現実を認知し始めます(前作ではマイクが両親はピエロに殺された、と発言していたと思います)。
ルーザーズクラブの成熟ばかり記述しましたが、バワーズは対比的に描かれています。彼はルーザーズクラブをいじめていただけではなく、父親殺害により逮捕され、27年後も自立していませんでした。むしろ精神錯乱し、隔離されてもホックステッターの幻想を見て、再び非行に走っています。
第2点目は、薬物中毒による"ペニーワイズ"という幻想に打ち勝って、正常に戻る人達の物語。
これは説明に無理があるかもしれません。
デリーという舞台は明らかに治安が悪いところです。それゆえ薬物が蔓延していてもおかしくない。
それゆえルーザーズクラブ達も薬物をやっていて、"ペニーワイズ"という幻想を見ているのです。
薬物をやっている、または誰に影響を受けたのかを説明します。
エディーは過保護な家庭であり、喘息の薬を飲んでいましたが、前作の後半で偽薬だと判明します。偽薬とは薬物の事ではないでしょうか。また彼の持っていた吸引器は大麻を吸う時に使用する物だとすると…。
べバリーは今作で度々タバコを吸っています。あれは大麻っぽく見えますし、紙に覚醒剤を入れて炙って吸ってるようにも見えます。
ビルは薬物を使用しているようには見えません。しかし前作でジョージと遊ぶのが嫌で仮病を使って雨の中ひとりで遊ばせたことは、薬物をやるために弟を一人でどこかに行かせた。またはジョージが消えた後に父親が「ジョージはもういない、死んだんだ」と発言していることから、父親の影響で薬物をしているようにも見えます。ジョージは"ペニーワイズ"に殺された、と思っている事から、薬物による幻覚症状が現れているようにも思います。(実際ジョージの死因は不明だが、ペニーワイズは幻想である事から殺人か転落事故が有力でしょう)
ビルは、バワーズに「両親ヤク中」と言われており、前作では1番初めに幻想を見る事から、両親の影響でやっているでしょう。
スタン、リッチー、ベンは不明なので友達の影響とします。
このような薬物中毒を前提条件とすると、脇役の立ち位置も変わってきます。
まずはバワーズ。彼は前作では薬物中毒ではありませんでした。何故なら警察である父親の厳しい目があったからです。彼が暴力を振るうのは素行が悪いからであり、ただの不良だったのです。
前作では無くしたはずのナイフが返ってきましたが、あれは現実で実際に父親を殺しました。その際に、テレビで子供やお姉さんが殺せ!殺せ!と言っていましたが、あれは父親が憎いゆえの幻想とします。
今作では精神病棟?刑務所?に入っていて、赤い風船が見えたことから、27年後は薬物中毒であったと思います。赤い風船に異常反応していたからです(ナイフが返ってきた時と同じ赤い風船ですが、この時とは違う幻覚という事にします)。
精神科医によって隔離室に入れられた際に、ベッドの下にあるナイフとゾンビになったホックステッターと一緒に逃亡しますが、このホックステッターは薬物による幻想であったのではないでしょうか。エディー達と再開した時にホックステッターはいませんでした。(ちなみにホックステッターはゾンビを見ていることから薬物中毒と仮定しています。前作で"ペニーワイズ"に殺されたわけではなく事故だった。理由は今作のルーザーズクラブの地下での戦いと同じ自然によるもの)
この流れでいくと、彼がルーザーズクラブを「負け犬」と言っていじめていたのは、正義のように思います。
またべバリーの父親。家庭内虐待として描かれていましたが、父親の発言が全てベバリー目線の幻想であればどうでしょうか?彼女が外で薬物をやる事を恐れて、監視下に置こうとしたのであれば、正しい道へ導いていこうとしていたように解釈できます。
例外はエディーの母親です。子供に偽薬を与えてかつ外出制限をしていたため、偽薬が薬物なら家庭内薬物汚染を助長していた事になります。
またエディー行きつけの薬局は薬物を提供していた事になります。そこにいた娘?はベバリーをいじめていましたが、これが薬物しているからという理由だとバワーズと同じ立ち位置になるかと思います。
薬物中毒を前提とすると、話も変わってきます。まず前作ではルーザーズクラブを結成し、メンバー全員が薬物を始め、その中でもべバリーが1番の薬物中毒だとします。子供達は様々な幻想を見る事になり、「ピエロ退治」=薬物をやめるという話になると、「付き合いきれない」という子がチラホラ。その後べバリーが"ペニーワイズ"に拐われた事(=幻想による彷徨で行方不明)で助けに行きます(=薬物中毒で死にかけのベバリーを救出)が、その時も子供達は姿を変えた"ペニーワイズ"(=各々の幻想)に襲われます。最終的にいかにも子供っぽい「武力」によってペニーワイズを鎮めます(=一応は試行錯誤で薬物克服、"ペニーワイズ"が完全に消えなかった事は再発の可能性を含んでいたと解釈しています)。
今作では、マイクがルーザーズクラブを招集(=デリーに残っていた事で、薬物を完全に断ち切れていない。幻想を見続けてルーザーズクラブに連絡。同性カップルの一人が河川で死亡した事により「形が変わった」感じたのが、偶然27年後だったのでしょう)。その前にスタンが浴室で死亡(自殺だったと思う。理由はマイクから連絡きた事で再び薬物をやるのが嫌だったか、家族に迷惑をかけたくなかったかだと解釈しています)。デリーのレストランで食事をしている際に、幻想に遭遇(実際に何もないのにマイクは椅子で机を叩いて壊しています)。その後マイクがペニーワイズ(昔の幻想)を研究し、撃退方法をビルに伝えます。その時にハーブ?か何か入った水をマイクに差し出しますが、高濃度の薬物入りの水で、ビルは再び幻覚症状に陥ります。ベバリーはタバコを吸っているため、薬物を断ち切れていない。エディーも吸引機を未だに持っていて、薬物をしているように見えます。そこから、思い出の他に出向くと数々の幻を見るようになり、ペニーワイズを本当に撃退しようとします(=薬物を断ち切ろうとする)。最終的に思い出の品を燃やす事で、薬物をやっていた記憶も消し去ろうとしていたのではないでしょうか。エディーは吸引機を燃やしています。ビルはジョージの船を燃やしていますが、既述の過去をなかった事にしようとしてるように見えます。撃退方法はあまりに恐ろしい"ペニーワイズ"を各々見た幻想通りに決めつける事で克服するという単純な方法で筋が通りませんが。
その後は現実をしっかり認知できるようになっていますので、薬物中毒説も一理あるかと思います。
この物語の核心は、仲間と一緒に困難を乗り越える事をホラーにしているだけかと思います。随所に社会問題などを散りばめていて、非常に興味深い作品でした。ただまとめ方が良いだけに、ホラー要素と設定が上手くかみ合っていなかったのが残念だったので★3をつけました。