「前作よりも更に全く怖くないホラー映画。」IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)
前作よりも更に全く怖くないホラー映画。
一昨年に、大ヒットした前作の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)は、当時にその評判を聴くと、それほど怖くないホラー映画で、むしろ『スタンド・バイ・ミー』的な少年少女たちの成長譚を描いた青春映画の趣が強い作品というTwitterはじめSNSなどでの多くの人の声を信じて、当時交際していた彼女と一緒に劇場鑑賞に行きましたが、欧米の映画にありがちな、急な大きな効果音や、いきなり飛び出してくるなどお化け屋敷風のホラー映画で、心理的な怖さによる演出が弱かったので、そんなにも怖くなくホラー映画と言うよりも、どちらかといえば、裏スタンドバイミーともいうべき、ジュブナイル的映画として楽しむことが出来たのでした。
そして今回の続編であり完結編の公開に際し、流石に、今回の続編は映画では大人になったルーザーズクラブの面々を対象にするのだから、かなり怖いのだろうと思い、本格的なホラー映画は大の苦手なので観に行くのを躊躇っていましたが、ぴあ株式会社×auのuP!!!ライブパスという有料アプリの懸賞に応募していたところ、今作のムビチケのペア2枚分に見事に当選!!!
タダで観られるのであれば、もしも仮に、もの凄く怖ければ途中で退場して鑑賞を切り上げれば良いと思い、私も、公開初日の11月1日(金)に滋賀県草津市のイオンシネマ草津まで、年老いた父親と共にクルマで劇場鑑賞に出向いて来ました。
舞台は前作の1989年から27年後、2016年のメイン州の片田舎にある小さな街デリー。
かつての6人の少年と1人の少女は、マイクを除いてデリーの街を去り、IT(それ)との悪夢のような闘いを忘れてそれぞれの生活を送っていました。
ところが、デリーでは再び連続殺人事件が起きており、マイクの声がけにより、かつてのルーザーズクラブの面々が27年振りに再会を果たすのでしたが・・・。
前作の第1章では、未だ少年少女だった彼らもこの第2章ではミドル世代に差し掛かっています。そしてルーザーズクラブの仲間たちは各地でそれぞれのある程度成功した生活を送っているのでした。
不思議なことに、ただ独りデリーの街に残ったマイク以外のメンバーは、最恐ピエロ・ペニーワイズとの闘いの記憶がなくなっていて、但し、その恐怖感だけはキッチリと脳裏に刻まれているのでした。その恐怖心の為にデリーに来られなかったメンバーもいるのでした。
最恐ピエロ・ペニーワイズからの呪縛を解くための第1段階としてデリーに集められた面々は、第2段階として過去を思い出し、想い出の品を集めることになるのですが、その為、前作の第1章での子供たちが再登場するシーンが多いのですが、これは原作既読者の或る映画ブロガーさんのブログ記事によりますと、原作小説では、映画の様に「子供時代」「大人時代」と明確に2つの「章」立ててドラマが進行するのではなく、両時代を行ったり来たりしながらお話しが進んでいくらしく、その点では、今作の第2章では、大人になったルーザーズクラブの一人ひとりのドラマパートの中に、それぞれの配役が子供時代を回想するシーンが挿入されていることから、原作小説の持つ面白さに近いものを感じさせられるらしく、これは前作の第1章で、しっかりと彼らの少年少女時代が描かれていたからこそで、併せて鑑賞するとなかなか良く出来た映画になっているとの事でした。
即ち、逆説的に言えば、今回の完結編は、前作の第1章の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)を観ている事が大前提となる続編映画とも言え、その為、今作が初見の観客の為のサービス精神なのか、過去を行ったり来たりして個々人のトラウマと向き合っていく過程をイヤと言うほど、やや説明過多気味ともとれるほど回想シーンを挿入しているからか、上映時間が169分と、こんなにも長くなるのも致し方なかったのでしょうね。
あの「子供時代」に着目して描いた前作を超えるのはやはり難しいですよね。
何と言っても、子供たちが最恐ピエロと闘うのが良かったのでしたが、今回の第2章は、大人対最恐ピエロだから、観客のこちらも違う意味合いで、一体どんな風に怖がらせてくれるのかと期待を膨らませました。
ですが、蓋を開けてみると、『遊星からの物体X』など、多くのSF映画に登場するクリーチャーのオマージュっぽい化身のよる、全般的に、気味の悪さや突然の効果音で驚かせて見せるホラー映画になってしまっていて、ほぼ全く心理的な怖さで見せる演出が少なく、ホラー映画なのに、前作以上に全く怖くない作風で、ホラー映画にあまり耐性のない私でも全く動じないくらいに大丈夫でした(笑)。
ホラー要素は未だしも、友情、笑い、愛情など色んな要素が詰まっていて、差し詰め、幼馴染みが集まるというくだりは、邦画の『20世紀少年』3部作の様な趣もありましたね。
キャスティングは前作の第1章の世界的な大ヒットを受けて、何気に豪華。
ジェームズ・マカヴォイもトラウマを抱える吃音気味のビルの役柄をそつなくこなしていましたし、大人になって、少年時代の自転車に乗るシーンが滑稽でいて、それで格好良く面白かったでしたね。
ジェシカ・チャスティンも少女時代のベバリーから比べると顔付きが細面で全く違うのでミスキャストかなとも思えたのですが、DVの夫から逃げ出すようにデリーに舞い戻ったベバリー役を見事に演じ切っていましたね。思わず、ジェシカ・チャスティンの胸元には熟女萌えでした(笑)。
それにしても、子供時代の心の傷やトラウマに向き合う中盤では、熱烈なポエムをくれてキスまでした男の子を間違えて記憶しているなんて!違う意味合いで、怖かったですね(汗)。
ビル・スカルスガルドが目玉をグルグルしながら楽しそう最恐ピエロのペニーワイズを演じているのは前作同様でしたが、今作でその正体そのものが土着信仰と結びつける説明からは、何故、ピエロと化すのか?何故、27年毎に現れるのか?とかなど、今作で「すべての謎が明らかになる、完結編」と謳いながらも、それら疑問点を全くの説明不問とされて、結局なおざりにされてしまった事柄が多く、釈然としない点も多かったのは確かでした。
結局、最恐ピエロのペニーワイズって何者だったのかよく分からないままになってしまったままでした。
また、キャスティング面で、誰もが、当初、この人は一体誰の役?と驚かされたのは、あのデブっちょだったベンが成長して、こんなにもイケメンのマッチョで事業でも青年実業家として大成功している役柄っていうのにビックリしたのではないでしょうか?
但しながらも、私的にも前作の第1章の少年少女時代の吃音のビルとデブっちょのベンと紅一点のベバリーの三角関係が気を揉んでいたのですが、今作では、彼らのその後を見届けられただけでも良かったですね!!!
終盤は、前作にも増して、遊園地のお化け屋敷の趣。
少年少女たちのひと夏の冒険といった、同じスティーヴン・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』を彷彿させた、ノスタルジックな味わいはかなり乏しくなってしまっていました。
一方で、気持ち悪い生き物や化け物の化身が沢山出てくるので、そういった物で怖く感じる御方々には、お化け屋敷度はかなりアップしたかもしれないですが、見た目の怖さや気味の悪さよりも、心理的に怖い演出を施してくれていれば、怪奇現象などが怖い私もかなり衝撃を受けたかも知れないですが、今作は前作よりも更に怖くなく全く大丈夫でした(笑)。
また、今作では、何だか、或る有名監督に似てる俳優さんだなぁと思っていたら、あのカナダを代表する新進気鋭の有名な青年監督さんが、今作の冒頭からいきなり、理不尽に暴力を受けるゲイの2人の青年役のうちの1人でカメオ出演していましたので、ご注目下さいね。
何にせよ、鑑賞される際には、兎に角、2時間49分。おそらく劇場CMや予告編を含めると約3時間も超える長尺なホラー映画ですので、鑑賞前にはきちんとトイレに行っておきましょう。
そして、前作の第1章である、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)を観てから今作の第2章を鑑賞すれば理解度も深まり、より面白く観ることが出来ることかと思われます。
※ちょうど今週末11月8日(金)の日テレ系列の金曜ロードshowで前作の第1章を地上波放送してくれるらしいのでその機会に観るのも良いでしょうね。
私的な評価としましては、
ホラー映画として観れば、私は全く怖くもなかったので、厳しい評価にもなってしまうのですが、青春映画と捉えると、なかなか良く出来た映画にもなっていたと思います。
ただ、前作の第1章に比べて、少年少女たちのひと夏の冒険といった、同じスティーヴン・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』を彷彿させた、ノスタルジックな味わいはかなり乏しくなってしまっていたのが残念でしたので、五つ星評価的には三つ星半評価の★★★☆くらいが相応しい作品かと思いました次第です。