「誰しもが折り合いをつけて大人になる。そこにペニーワイズの"かまってちゃん"」IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
誰しもが折り合いをつけて大人になる。そこにペニーワイズの"かまってちゃん"
前作はエンドロールで、"Chapter 1"と表示されてのけぞったが、あれから2年が経った。待望の続編は169分(ほぼ3時間)という作品情報にヒビりながら初日IMAX鑑賞。
IMAXを選んだのは殺人ピエロ、"ペニーワイズ"の顔を超大画面で見たいというだけで、本作はシネスコアスペクトなので、ドルビーシネマ館で暗部のHDRを楽しんだほうがよかったかもしれない。
"Chapter1"は、米メイン州デリーで起きた児童失踪事件。その犯人は、子供たちだけが見える殺人ピエロ、"ペニーワイズ"の仕業だ。
ピエロのペニーワイズは、子供たちひとりひとりの怖いもの="それ(it)"に変身するのだ。"loser"(いじめられっ子)である、7人の子供たちは一致団結して、ペニーワイズの恐怖と対峙して、それを乗り越えた。
"Chapter2"はそれから27年後。あのペニーワイズが故郷でまた連続事件を起こす。それを知らされた"loser"(いじめられっ子)たちは、27年前の"血の約束"を果たすため、故郷に呼び戻される。
本作は原作の年代設定を少しズラして、27年後が現代になるように調整してある。
ホラー映画の歴代1位の興収記録を作り上げた"Chapter1"だったが、本作の本質はホラー映画ではない。
大人になれば忘れ去ってしまう、お化けの正体は、大人の理不尽な言い訳だったり、子供に隠しておきたいことだったりする。キングの書く恐怖は、思春期の子供たちなら誰しもが持つ不安にある。
誰しも、自分自身や社会との折り合いをつけながら大人になっていく。故郷を離れ、かつての友人たちとも疎遠となり、子供時代の"怖いもの"だけでなく、"初恋"、"友情"、"想い出の場所や宝物"の記憶も遠くかなたに消えていく。
イット(IT)は、みんなの心の中の子供時代の象徴なのである。やはりスティーブン・キング原作の「スタンド・バイ・ミー」(1986)と同じジュブナイルなのである。
ジェームズ・マカボイ(ビル役)の存在感はさすが。尺が長いのは、ひとりひとりの深層心理のトラウマがつまびらかにされていくからで、それらは大人になった"loser"(いじめられっ子)たちを演じる俳優たちの巧さで支えられている。
それでも思ったほどは長く感じないのは、いちいち、ピエロのペニーワイズは"笑い"を提供してくれるから。
嘔吐や下水道、数々の汚いものも、子供の大好きな"ウンコ、ゲロ"のたぐい(大人が子供に禁句とするもの)。
ペニーワイズの仕業はすべて子供の心が生み出す妄想・幻影。とにかくペニーワイズが、"かまってちゃん"であることに気づくと、笑いが止まらない。ホラー好きにはお馴染みの名作リスペクトシーンや、クソかわいいクリーチャーたちの暴走。観れば観るほど楽しくなる。
(2019/11/1/IMAXシネスコ/TOHOシネマズ日比谷Screen6/字幕:野口尊子)