「本人の意志、という厄介な代物」人魚の眠る家 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
本人の意志、という厄介な代物
多分、意図された事ではないのだろうと思う。この映画を観た人に感想を聞いたり、他のレビューを見たりすると意外と全然違うところが気になっているみたいなことは。
ある人曰く、「何でもお姉ちゃんが中心で弟が可哀想」。ある人曰く、「自分なら意思を持たなくなった時点で死とみなしてほしい」。またある人曰く、「自分だって子どもがあんな状態になったら同じことをするかも」。
この映画を観た時、誰に一番感情移入するのか。誰のことが「自分ごと」なのか。面白いほどバラバラなのが本当に興味深い。
かく言う私は映画を観てる最中、あっちへフラフラこっちへフラフラ、誰か一人には定まらなかった。
それくらい登場する関係者たち全員に共感するポイントがあったし、どの立場になる可能性も感じたのだ。
と、同時に物語の中心である瑞穂が脳死状態なので、瑞穂に感情移入しづらいという側面もある。
瑞穂の意思や感情はすでにこの世になく、周囲の出来事を感知しリアクションすることはないのだから。
もうひとつ、興味深いのはこの状況を作り上げているのはそれぞれの「罪悪感」であるということだ。
罪悪感が深ければ深いほど「瑞穂が生きている」ことに固執し、罪悪感の薄い人物から「この状況はおかしい!」と訴えていく。
罪悪感が人を理性から遠ざけ、罪悪感が人を狂わせる。
色々と興味深い考察はあったが、面白いか?と聞かれたら面白いとは言えない。
感動するか?と聞かれても、ぶっちゃけ感動はしない。
これは自分の罪悪感を抉ってくる映画だ。
「そっとしておいてくれ」と言う他ないだろう。
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