「脳死は人間の死か、衝撃の愛のカタチを描く!」人魚の眠る家 だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)
脳死は人間の死か、衝撃の愛のカタチを描く!
東野圭吾の同名ベストセラー小説の映画化ですが、とにかく深いそして重いテーマでした。脳死は死なのか、愛する我が子が脳死判定されたら家族はその人を"死"と受け止めれるでしょうか…。なんとも難しいテーマです。
しかし、脳死したらいきなり臓器提供の意思を聞かれるんですね。そこには、家族の思いはまるで関係なく。脳死したまま延命をするか、臓器提供して生きれる命を救うのか、いきなり判断なんてできやしないのに。
娘の瑞穂が脳死と判断された、薫子と和昌が選んだのは、禁断の延命でした。科学の力で人形…いやロボットのように動かされ体だけ成長していく瑞穂は生きているといえるのでしょうか。
娘は生きているそしていつか目を覚ますと思い続ける薫子、笑顔まで作らされて生き続ける愛する娘の臓器提供を考え本当の死と認めようとする和昌、研究により脳死した人間の体を動かし父の代わりに成長を見守り第二の父といわれる星野。死んでいるか生きているかで翻弄される周りの人たち。いったい誰が正解で誰が間違っているのか。その答えがないから、悲しみ苦しんでしまう。そうなんです、誰も間違ってはいないのですから。
ただ、母は娘の生にこだわり続けた。娘が操り人形となっても希望を持ち続けた。「この娘が死んだというなら、心臓を刺したら殺人なのか!?」と迫る母は、狂気と覚悟が見えました。娘を刺そうとする母と、すでに死を認めている周りの人たちの場が逆転した瞬間なのです。強烈に鑑賞者の気持ちも逆転させるほど、感情をえぐる瞬間だったのではないでしょうか?
みんな辛かった、母も父は当然です。弟が脳死の姉のことで学校で辛い思いをしないために姉が死んだと判断したことも辛かった。自分のせいで瑞穂が事故にあったとずっと罪の意識で過ごしてきた祖母も辛かった。薫子の妹晴美は支えながらも姉の変貌していく姿を見て辛かった。そして…瑞穂の従妹若葉は自分のせいで事故に遭ったと言えずに抱え込んできた歳月は何と辛かったでしょうか。
母が娘を殺そうとした瞬間、みんな心の中で耐えきれない思いがすべて爆発した、すごいシーンでした。心が締め付けられ、涙が止まりませんでした。
この映画は俳優陣全員が見事に演じた作品だったと思います。拍手を送りたいほど感情を揺さぶられました。
母は、娘の死を受け入れました。父は、心臓が止まる瞬間が死と最後に言いました。
医者は言いました、「では娘さんはまだこの世界のどこかで生きていますね」と…