「心が描かれた作品。」人魚の眠る家 maruさんの映画レビュー(感想・評価)
心が描かれた作品。
人工呼吸器→横隔膜ペースメーカーに。
脳からの信号→外部からの電気信号に。
そうすることで『体が動く』我が子の姿に、無くなったと思っていた「命」の灯火を見出す夫婦。
体内から生まれる反応ではなく、体外から加えられた力による反射を見て「生きている」と、自分に言い聞かせ、認識させる。
体の成長は、植物に水を上げるがごとく、栄養を与えて適度な運動をすれば成長するようになっている。
しかしそれは、果たして『命』なのか。。。
心が締め付けられるようなそれぞれの登場人物の心の葛藤。
瑞穂ちゃんが、人間の「形」を留めてるだけに、肉体が外部からの反射によってであれ「動く」だけに、人間の形+肉体の動きで「命」を感じてしまう。「生きている」と感じてしまう。
星野と母は、瑞穂が『目覚めたときに、スグ歩けるようにするため』にANCで筋肉を「操作」していたのが、いつの間にか「操作するための」へとすり替わって行く。
母以外の周囲は、瑞穂を生きていると思えていない。ついにキレた母親は、瑞穂を人質に取り、自らの手で瑞穂を殺そうとする。
皮肉にも「殺そうとする人間」を見て、殺される対象である瑞穂ちゃんが「生きている」と周囲は思わされた。。。なんとも悲しい生の証明か。愛にあふれる説得は、誰にとってもとても残酷でした。
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「脳死は人の死なのかどうか正直、今でも私にはわかりません」
脳死は、そこに横たわる本人にとっては、死なのかもしれない。しかし、母や父や家族にとっては死ではない。心と体は、切り離せない。頭でわかっていても、心で信じている。それでもいつの日か、無情な時間の積み重ねで、心が信じられなくなったとき、頭と心で理解してしまったとき、死を迎えいれる「準備」がやっとそこでできる。
登場人物の心がむき出しに、心の気が済むまでを描いていた。心が描かれた作品。