「吹替がクソ。」ゴジラ キング・オブ・モンスターズ alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
吹替がクソ。
とりあえず何よりも真っ先に言いたいのは、「吹替がクソ過ぎて見てられない」です。
地上波で見たので、ディスクやVODの担当声優はまた違うかもしれませんが、地上波のはとにかく酷い。主人公の顔に声が全く合ってない(田中圭)、主人公の妻の声はただただ下手くそ(木村佳乃)。子供役の声が一番上手かった(芦田愛菜)。
内容が頭に入ってこないレベルで下手くそでした。洋画の主人公格の吹替に流行りの俳優テキトーに捩じ込むの、そろそろ止めてくれないかなぁ。これで映画の評判下げてる部分あるよ、絶対。
『ジュラシック・ワールド』の仲間由紀恵の吹替が物凄く叩かれてましたが、木村佳乃も正直あのレベル。
吹替のせいで評価を下げるのは流石に製作陣が可哀想なのでしませんが、でも話に集中できなかったので影響はしてるかも。どのみち低評価には変わりないですが。
映画自体は、相変わらずCGの迫力に物言わせて無理矢理カッコ良く見せてる感丸出しです。
仕事から疲れて帰ってきて、ただぼんやりと見る分には良いかも。ただそれでも、ちょっと退屈で長く感じました。まだ終わらないの?と3回ほど時計を見たので、ゴジラ原作をよく知らない人、合わない人にはかなり長く感じると思います。
前作は2014年の『GODZILLA ゴジラ』らしいのですが、もう5年も経ってるんだしちょっとはマシになったかなーと多少の期待はしてたものの、結局特筆すべき点はなく…むしろ個人的には『GODZILLA ゴジラ』の方が好きです。
前作は出てくる怪獣がゴジラのみだっただけに、本作よりゴジラをきちんと掘り下げていた分、日本のゴジラ原作を知らない人にもシンプルでわかりやすく、決して日本のゴジラのようには見られず別物としてではあるものの、あくまで「ゴジラという名のモンスターが出てくるアメリカのパニック映画」と考えれば良い方だったのでは、という感じでした。
が、本作は色々な怪獣がワサワサ出てきて、〇〇がこっちで暴れてる、そこへ〇〇が来た、こっちでも〇〇が…と忙しなく、カットが入りまくるので視界もめまぐるしく、戦闘シーンなどは爆発も相まって何が何やら。人間側も2グループに分かれているが、実はその中でも考え方の異なる人達がいて…など、もう誰が誰やら。記憶力の悪い人には「何が何だか」としか言いようがないです。
あと、ゴジラの外観は1作目の弾丸兵器みたいなのではなく、少しだけ日本のゴジラ寄りになってました。でも、まだダサい。何か、鼻だけゴリラみたいな…で、頭が小粒で、身体がやたらデカい。あの何となく可愛げのある日本の着ぐるみゴジラはどこ行ったんだよ…
それから一番気になってるのが、1作目でゴジラが飛ぶ(!)時のあの格好。前足(?)を横に「気を付け!」みたいにピーンと伸ばして飛んでくるやつ。あれもしかして気に入ってるのか?
今作でも、今度は水中で泳ぐ時あのスタイルでした。何であんなブタが床に寝そべる時みたいな格好にしたんだろう…ミニブタが床に寝そべる時、まんまあの格好してるの見て笑ってしまった。
既に色々悪評書いたけど、そもそも脚本がいただけないですな。製作総指揮に日本人の名前が何人も入っているにも関わらず、悪い意味で完全に「アメリカン」でした。
以前『ザ・マスター』という映画のレビューで散々書いたのですが、アメリカ人の思考がそもそも「相手を支配しろ、支配できない奴は殺せ」なんですよね。全てにおいて支配支配。めんどくせ〜!ってレビューを書いたんですが、本作でも結局ずーっと支配支配言ってます。
曰く、怪獣を支配しろ!操れ!操れないなら殺せ!です。いやぁーめんどくせぇ~~~!!!!
ていうか、あんなドデカ生物を目の前にして、「うわぁ~こえぇ~支配しろ~!」って思考回路どうなってんだよとしか思えないし、序盤で殺そうとしたそのドデカ生物を利用して当然のように助けてもらおうとするラストも図々しさハンパねぇ~!!
「オキシジェン・デストロイヤー」とかいうダッセェ爆弾(?)を放り込み、水中で戦っているキングギドラとゴジラを殺そうとしたら普通の魚だけ皆殺しにしちゃいましたぁテヘペロ☆⇒ゴジラも弱って死んじゃったけどキングギドラはピンピンでやべぇ~!やっぱゴジラが必要じゃ~~!!⇒ゴジラ省エネモードで体力回復してるだけだった、やったぁ!キングギドラ殺すのにゴジラを爆撃で叩き起こそうぜ!⇒ゴジラとモスラが戦ってくれてる間に人間共はトンズラ。
いや~、核の恐ろしさじゃなく人間の醜さを学ぶ映画だったんかな?????
自分らが攻撃して瀕死に追いやった、体力回復中のゴジラを爆撃で叩き起こすってナニ????
しかもゴジラって核の恐ろしさを描くための作品じゃなかった??核兵器ドーン!してるすぐ傍にいて、ただの人間がちょっと顔背けたり腕で顔庇っただけで避けた気になってるとかありえねーからww
アメリカの核や自然の力をナメ腐ってるあの姿勢、何なんでしょうね。
自然に関しては、日本は自然災害が多いからとか尤もらしい言い分を聞くこともありますが、アメリカだって台風、竜巻、地震、山火事、色々ありますよね。でも何度やられても、何故か「俺達が支配する側」と信じて疑わないんですよね。アホなのかな?
戦うとか支配するとかじゃなく、共存するのが唯一の方法だと、一応本作でも触れてはいますが、サラーっと流されます。で、殺すんだ~!操るんだ~!で失敗して海を汚染、魚は皆殺し、ゴジラを瀕死に追いやり、ギドラを倒すにはゴジラしかいないんだ~!ゴジラを叩き起こすんだ~!って。アホか。
で、最後は「魚が全滅して獲れなくなった!どうしてくれんだ!」と続編へのにおわせをして終わりますが、あまりに馬鹿らしすぎて鼻で笑ってしまいました。
要約すると、ずーっと「俺に従わない奴は殺せ!都合の悪い奴は皆殺せ!自分らで殺せないなら他の奴を利用してでも殺せ!何を犠牲にしても殺せ!」です。ヤバすぎぃ!
まぁ何というか、日本にとっては核の怖さ=アメリカのアホさってことなのかも。そういうことなら、納得。確かに武器なんて、使う人間に左右されるもんな。「核を扱う人間がアホでクズだとこういうことになる」と言いたいなら、この内容でも納得します。
核の怖さより、馬鹿でクズな人間の怖さがよく描かれた作品だと思えば、良作かも。
ラストは感動とか興奮とか何もなく、ただただ半笑いでした。
最近はアメリカでも、特に若者を中心に核について関心を持つ人は徐々に増えているようで、日本が真珠湾を攻撃したことに関しても、研究者が「実際にはアメリカが日本に圧力をかけたために、日本は戦争に参加せざるを得なくなった。日本を追い詰めたのはアメリカだ」とアメリカ国内で発表し、物議を醸したそうです。
数年前に見た時は、未だ「日本に原爆を落としたのは正しいことだったか」という質問に対しほぼ半数がYESと答えていましたが、少しずつYESの数は減ってきているようです。年配者はなかなか受け入れられないようですが。
未だに核爆発が目と鼻の先で起きたのに、主人公が「やりきった」みたいな顔で爆風を手で避けただけで健康体で家に帰って家族とピンピンしてるアクション映画なんか見てると、アメリカは永遠にこの調子なんだろうなと思っていた身としては、ほんの少しずつとはいえ、こうしてアメリカ人の考え方が変わってることに驚くやら安心するやら。
もう10年もすれば、アメリカ映画での核の扱いも変わってくるのかもしれませんね。というか、昔よりはまともに描いてる映画も増えてきてはいますが。
『ターミネーター2』みたいに、印象に残るシーンを入れてくれたら良いんですけどね。皆ラストの"I'll be back."ばっかり話題にするけど、自分は『ターミネーター2』の中であの爆発で消し飛ぶシーンが何よりも記憶に残ってますし、どんなに呼びかけても我が子に声が届かず、息子ともども塵になって消し飛ぶという、爆撃の悲惨さがよく描かれていて凄く好きです。
まぁともかく、ゴジラの一番重要である「核の恐ろしさを描く」というテーマに関しては、本作は全くもって大失敗でした。次に期待…はしません。どうせこの調子だろうし。
ファンタジーとして、「あーアメリカ人ってまだ核兵器の知識ないんだなーいつになったらまともに調べるんだろうなー」という視点で楽しみましょう。
製作総指揮の日本人たちは、アメリカ人を前に「核兵器はなァ、そんな生ぬるいモンじゃねえんだよォ!!オメエら自分の落としたモンのことも知らねェのか!!?」とは言えなかったんでしょうな。