「忌まわしいラッセル一家と哀れなモスラ」ゴジラ キング・オブ・モンスターズ John Titorさんの映画レビュー(感想・評価)
忌まわしいラッセル一家と哀れなモスラ
前作から5年後、超法規的組織モナークによって怪獣の調査、管理が行われているというのが本作の設定であるのだが
設定と対立軸に無理があると結論付けられる
まずはモナークにつて
前半でアメリカ上院委員会によってモナークの活動が批判されるシーンがあるのだが、そもそもこの組織がどこの管轄であるのか疑問である
その後の設定描写も考慮すると国連傘下のものと解釈できるが、それならばこのようなシーンは矛盾が生じる
またモナークはその采配下、あるいは米国や他国の軍隊と対等に軍事作戦を展開するだけの能力が与えられているが、その割には南極基地にろくな配備もせず、みすみすテロリストに制圧される醜態を晒した
またそれ故にこのテロ組織も極めてみすぼらしく見える
モナークが国連所属ならば本作のテロ組織は中国やロシアに置き換えることができ、随分と見栄えも良くなっただろう
そして本作におけるモナークの象徴ともいえるアルゴという巨大な飛行艇には苦笑を禁じえなかった
その巨大さ故の鈍重さや脆弱さは言うまでもなく、対怪獣用空中空母がB-2を想起させるステルス機なのには製作陣のやっつけ感しか感じられなかった
次にラッセル一家である
本作ではストーリーテラーの役割をしているが、正直なぜ怪獣映画に家族の絆をここまで取り上げられなければならないのかが疑問である
マディソンについては、申し訳ないがお前は兵士でもましてや大統領でもない、あの状況で兵士が何人も負傷しヘリや戦闘機が何体も撃墜してまで救う価値はお前にはない
映画で子供は殺せないと言われるがマディソンを助ける意味を私は見い出せなかった
そして The BBA エマ
なぜ彼女があそこまでサイコになる必要があったのか、その必要性が感じれれない。そのせいで後半のテロ組織の存在が空気になってしまった
また彼女は仲間を間接的に虐殺したことに対して負い目を感じることはなく、それでいて自分と娘の身体を自然に委ねないのだからちゃんちゃらおかしい
彼女を見ていて反ワクチン運動を連想してしまった
それほどに彼女は活動家としては満点で科学者としては追放である
マークについてはオルカという怪獣操作機に併せて話に拙さを感じる
本作のオルカはまるで魔法の杖だ
極めて原始的なメカニズムで怪獣との交信どころか怪獣の部分的な操作まで可能にしてしまう
これはもうファンタジー映画じゃん Fantastic Beastでも始める気かよ、と見ていて辛くなってしまった
百歩譲るとして、原理は至極単純であるのだからマークはなぜオルカのシステムを世界中で共有しようとしなかったのか疑問でならない
後半に世界中の都市が怪獣によって荒廃するシーンがあったが、それ故に実に滑稽で哀れであった
最後に細かい描写への違和感について
海でゴジラが直立するシーンはすでにネットで話題になったからスキップするとして
本作では高い放射線量に対する機器の警告シーンが何回も登場するがどんなに少なく見積もっても渡辺謙がゴジラに到達することはあり得ない
せめて血を吐き、肌が亀裂しながら歩いてほしかった
本作の主だった人間は次回作で全員スキンヘッドで出演させてくれ
本作ではモスラのシーンも多く、とりわけ戦闘シーンは素晴らしい出来であったが、それだけにモスラの最後が単なるゴジラの弾除けというのには納得がいかなかった
その描写をするくらいならばラドンと相打ちでも良かったと思えるほど無残なものだった
そして、ラストシーン
ゴジラに跪くような動きをする他の怪獣たち
もう幻滅
実に人間臭い、お前ら本当に怪獣なの?
キングギドラを倒した時点で戻ろうとしないのはなぜ?
とまぁただただ設定が残念でならなかったのだが、
文明発展と環境破壊の対立軸はまさに喫緊の国際問題であり、こういったテーマをベースにするハリウッドはやはりハリウッドと思うことができた
また怪獣のCG、それらの戦闘シーンはこれだけで見る価値があると思わせるクオリティだった
よって総合的な評価として☆2とする