「映像は満点ながら、脚本が破綻した作品。」ゴジラ キング・オブ・モンスターズ HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)
映像は満点ながら、脚本が破綻した作品。
ハリウッド版ゴジラの第二作目であり、レジェンダリー・ピクチャーズ製作の「モンスターズ・ヴァース」シリーズの第三作目。
第二作目『キングコング:髑髏島の巨神』のオマケ映像の障壁画に描かれていたシルエットから、ゴジラに続き、モスラ、ラドン、キングギドラもハリウッド進出かと話題を呼んでいましたが、とりあえず今回の作品は「映像」と「音楽」には大満足。
製作陣が日本版ゴジラをリスペクトしているのがよく解り、日本版ゴジラの魅力を押さえた上で、ハリウッド版による世界規模の大迫力の怪獣映画にはなっていましたね。
キングギドラの凶暴性や、モスラの献身愛的な行動、ラドンの活躍など、巨大怪獣バトルによる怪獣プロレス映画としては充分に楽しめました。
また「音楽」の面でも、「ゴジラ」のテーマや「モスラ」のテーマといった、お馴染みの伊福部先生作曲の音楽の中に、お経や祭り囃子の掛け声といった音声をマッシュアップしてリミックスしたサウンドが斬新で良かったです!
しかしながら、非常に勿体なかったのは、人間ドラマのパートをはじめ「お話しとしてちゃんと成立しているか」度合いが、ギャレス・エドワーズ監督によるハリウッド再リメイク版の『Godzilla』(2014年)よりも更に内容的にも酷くて、脚本的に破綻している印象を受けたところですね。
有り得ない展開、ご都合主義だらけな展開で構成されていて、そもそも諸悪の源である、エマ・ラッセル博士(ヴェラ・ファーミガ)が「自然の摂理」を謳いながらも、その思考自体も、あたかもMCUシリーズの『アベンジャーズ』での魔人サノスによる「指パッチン!」の発想と変わらぬような思想であり、自然環境テロリストの傭兵部隊達に拉致されて無理強いされた設定にせよ、その割には、狂信的な科学者としても首尾一貫した理屈で行動していないうえに、製作サイドにより、家族愛を絡めて、お茶を濁して同情を惹こうとするような展開も空回りに終わり、観客である私も、いずれかの登場人物に共感しようにも、まともなキャラがほぼ皆無で共感のしようが無く、置いてけぼりを喰った様なポンコツぶりが目立つ人間ドラマのパートの酷さでした。
また、エマ・ラッセル博士の娘のマディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)と比較しても、父親役のマーク・ラッセル博士(カイル・チャンドラー)の存在感が際立って薄いのも致命的でしたね(汗)。
薄っぺらくて何度も突っ込みを入れたくなるような場面ばかりで冗長で雑な脚本仕立てのドラマパートに、盛大な怪獣バトル。
どの登場人物にも感情移入出来ず、ゴジラオタクのマイケル・ドハティ監督に成り代わり、登場する怪獣への敬愛ぶりを代わる代わる説明するだけの、未確認生物特務機関のモナークの、あたかも頭がおかしいような登場人物達のオンパレード。
それに加えて、ゴジラの存在意義はそもそもが水爆実験で誕生した怪獣であり、日本においては、反核的・警鐘的な意味合いを持つ怪獣であるはずが、ゴジラが核兵器から力を得るといった発想自体が、今作では核を正当化している点で、ゴジラの本来的な存在意義が薄まってしまい、単なる昭和の高度成長期の頃の様な怪獣プロレスを見せるだけの映画に成り下がっていた点が非常に残念でしたね。
オキシジェン・デストロイヤーについても、初代ゴジラへのリスペクトが少しでもあるのならば、あの様な中途半端な使い方自体止めて欲しかったですね。
芹沢博士(渡辺謙さん)の「さらば、友よ」といった一連の決断シーンも、初代ゴジラを転義させたオマージュ的演出で、あのシーンにおいては唯一感情移入出来たかも知れなかったですね。
但しながら、脚本上の演出的な方法論としては正しくても、反核的な意義としてのゴジラを鑑みると、あの演出は、あまり嬉しいものではないのも確かではありましたね。
ただ、あくまでも怪獣映画の主役は巨大怪獣達であり、脇役である人間ドラマのパートは重要ではないという意見もあり、今回の怪獣プロレス重視による、人間ドラマのパートのポンコツ度合い自体も、もしや昔の昭和の高度成長期の東宝怪獣映画に対するリスペクトなのかとも感じ取れるものでした。
すなわち、懐かしい、昭和の「東宝チャンピオンまつり」で上映されていた当時の年配者のゴジラファン層の観客を意識した怪獣プロレス重視の映画に特化しているのかも知れないですね。
ですので、私的な評価と致しましては、
脚本面ではお話し的に破綻した映画ではありましたが、それでも、巨大怪獣同士のバトルシーンなど、見どころはありましたので、「映像」や「音楽」の面では満足いく出来映えでしたので、かろうじて及第点として満足のいく、五つ星評価的にも★★★★(4.0)の四つ星評価とさせて頂きました。
※個人的には、芹沢博士役の渡辺謙さん以外にも日本人俳優の起用を検討して欲しかったのですが、中国資本のレジェンダリー・ピクチャーズ製作の映画だからか、中国を代表する中国人女優のチャン・ツィイーを起用したのかも知れないですね。
チャン・ツィイーを双子の設定にするのも良いのですが、出来れば、インファント島の双子の小美人による「モスラ」のテーマが聴きたかったですね。
※尚、エンディングロールの際に、2020年公開予定の次回作の『GODZILLA・Vs.KING KONG』のオマケ映像とは別に、エンディングロールの最後の最後のオマケ映像が衝撃的ですので、最後まで席を立たないで鑑賞しましょう。