「人がゴミのようだ(平常運転)」ゴジラ キング・オブ・モンスターズ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
人がゴミのようだ(平常運転)
吹替版で鑑賞。田中圭は上手いけど声が若いなあ。その他は違和感ゼロ。
貴重な2D吹替(1回/日)のせいかちびっ子率が高く、とくに序盤はあからさまに気が散っていた。あと膀胱はカラにしておかないと持たない…ぶっちゃけ怪獣の出てこない≒トイレタイミングな時間はあるけど。
監督・脚本はアニメーター出身で、これまでヒーローものの脚本などもやってきたという最強のオタク、マイケル・ドハティ。
怪獣ものとハリウッド式人間ドラマの相性の悪さを、きちんと両立させるように逆算して(多分)、常に怪獣プロレスのど真ん中に人間が置かれる、という最悪のシチュエーションをうまく設定している。
あまりに最悪すぎて爆笑してしまうほど。
登場する怪獣が多すぎてバトルが取っ散らかるのでは…という事前の危惧も、対決の構図を整理することで、うまーく回避していた。
この脚本に文句つけたらバチが当たる(まあ核兵器の扱いについてはちょっとモヤッとはした…)。
オタク的な怪獣偏愛はもちろん(前線基地のナンバーが公開年になってるとか…)、それに耽溺しない客観性も行き届いていて、ハリウッド的な家族の話と怪獣ものの醍醐味を両立させるというウルトラCを成し遂げた。潤沢なバジェットが背後にあるにせよ、これは偉業だと思う。よくぞこんな人を見つけてきたなあ…。
2014年のギャレス版も嫌いにはなれないけど、人間ドラマと怪獣ものをうまく接続できず、いびつな脚本だったことは認めざるを得なかった。そこを今作では極めてクレバーに乗り越えてしまった。
怪獣たちの声に注目するというのも、オタクならではの(?)優れたアイデアだと思う。
前作の設定を踏襲しつつ、レギュラー登場人物を次作に向けてアップデートするプロセスをきっちりドラマとして仕上げてくるあたり、正しくオトナの仕事というに相応しい。
日本版ゴジラを象徴する「芹沢博士」こと渡辺謙に代わって今後はチャン・ツィイーが活躍しそうな流れとか、一度は傾きかけたレジェンダリーが中国資本で復活した経緯の反映にも見えたけど、これを超えるハリウッド版のゴジラはしばらく出そもないから、文句を言う筋合いもなく。
すでに日本で大好評を博しているこの作品が、全世界での興行を成功させることを願う。
今後は「日本発の」という枕詞が取れた怪獣映画が量産され、いよいよこのジャンルが世界的なスタンダードになれるか試されるフェーズに入るのかなあ…
さすがに尺が長くて疲れたので、今はお代わりは考えていないけど、願わくば怪獣パートだけもう何度か劇場で浴びたい。
怪獣ってつまり、壮大なボケみたいな存在だから、突っ込みが追いつかないというのは正しいアプローチなんだな。
噂のシンフォニック般若心経とか、言い出したらキリがない。キングギドラの3兄弟ぶりもほほえましかった。
ちなみに200円違いのパンフレットの特別版と通常版は、コンセプトアートを配したスリーブみたいなブックレットがつくかどうかの違いのようだった。お布施感…