劇場公開日 2019年5月31日

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「初代ゴジラへのリスペクトが半端ない傑作」ゴジラ キング・オブ・モンスターズ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5初代ゴジラへのリスペクトが半端ない傑作

2019年6月2日
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鑑賞方法:映画館

興奮

2D 字幕版を鑑賞。ハリウッド製の3作目のゴジラである。1作目ではゴジラのデザインが全く気に入らず、エイリアンのパクリのような設定変更が作品を台無しにしていたし、2作目ではゴジラより敵方のムトーの方に注力されていたのが気に入らなかったが、今作は一転してオリジナルのゴジラへのリスペクトが感じられる作りとなっていて、大変見応えがあった。

前作を引き継ぐような物語構成になっており、主要な登場人物が続けて登場しているが、絶対に前作を見ておかなければダメというほどの作りにはなっておらず、単独の作品として十分に鑑賞可能である。ゴジラの体型は前作でもかなり太めであったが、今作は完全にマツコ体型となってしまったのが個人的には残念であった。だが、キングギドラやモスラ、ラドンなどのデザインは日本製を遥かに凌駕しており、ハリウッドの CG の実力を垣間見せられた気がした。

脚本は、ハッキリ言ってご都合主義の塊であり、人物の行動原理に大きな矛盾を含んでいるところなどが目に付き、穴だらけという印象である。特に、家族を殺された科学者が、自らと同じ境遇の被害者を多数出そうとしているのには全く目も当てられないと思った。科学的検証も実にいい加減で、海中の潜水艦に電波が届くとか、パスカルの原理を無視した風圧の描写とかがあって笑わせてくれたが、キーとなる装置の扱いがぞんざいに過ぎており、セキュリティロックもされずに簡単に持ち出されてしまったり、スピーカーに繋いだだけで地球規模の通信が可能であったりしたのには本当に呆れた。おまけに、衝撃を受けて致命的に壊れたと思わせておきながら、半田付けを1箇所やっただけで機能を回復するなど、本当に笑わせてくれた。まあ、マッハ 30 くらいで地球に降下してきた探査衛星にサッカーボールを蹴って当てて見せてくれたコナンよりはマシという程度であろう。

そうした粗を補ってあまりあったのが初代ゴジラへのリスペクトであった。渡辺謙が演じた博士の名前が「芹沢」でありながら、ゴジラの性善説を唱えるところなど、元祖の芹沢博士に対する冒涜ではないかと思っていたが、初代ゴジラに出てきた最終兵器が登場したり、目的は全く逆ながら、元祖・芹沢博士を彷彿とさせる行動が見られたのには非常に感心した。ただし、最終兵器の効果についての描写には非常に不満を感じた。

役者は皆よくこんな穴だらけの脚本に対して真面目に演技できるものだと思った。渡辺謙は、前作と同様に、ゴジラのことを英語風に「ガッヅィ〜ラ」ではなく、日本語そのままに「ゴジラ」と発音するなどこだわりが感じられて良かった。チャン・ツィーが出ていたのは、例によってCが巨額の資金を提供したのが察せられた。彼女が双子という設定になっていたのは、モスラの小美人へのオマージュであろうが、あまりその設定がちゃんと伝わっていないように思われた。「ラドン」が「ロダン」と名前が変えられていたのが釈然としなかった。

音楽は、実に素晴らしかった。聞いたことのない名前の方だったが、伊福部昭の数々のテーマを取り込み、独自のセンスで見事なアレンジを加えてあり、日本のゴジラファンは狂喜すること請け合いである。また、芹沢博士の印象的なシーンに付けられた曲は鳥肌ものであった。特に、エンドロールではそれらがメドレー構成で奏でられるので、まるでオペラの後奏曲のような作りになっていて実に聴き応えがあった。エンドロールの後にオマケ動画があるので、最後まで席を立たれないようにとお勧めしておく。サントラ CD は早速ポチった。

前作からの監督交代は、いい方の結果を生んだように思う。人間ドラマの方は脚本の出来の悪さと相まってイマイチだが、怪獣同士の戦いっぷりはアメコミ映画さながらに見事であった。人間が怪獣に近づき過ぎではないかと終始気になるが、迫力を増すためにわざとやっているのであろう。その意味では演出は非常に上手く行っていると言うべきである。続編の製作が決定しており、次はキングコングが相手らしい。監督と音楽は変えないでほしい。
(映像5+脚本4+役者4+音楽5+演出5)×4= 92 点

アラ古希
アラ古希さんのコメント
2019年6月4日

ご丁寧に有難うございます!

アラ古希
カミツレさんのコメント
2019年6月3日

アラカンさん、どうもはじめまして。
「オルカ」の扱いに対するツッコミが的確過ぎて、笑わせてもらいました。

アラカンさんも指摘しておられる「人間が怪獣に近づき過ぎ」なところが、個人的には一番引っかかりました。
あの距離だったら、たとえ直撃は避けたとしても、衝撃波やら爆炎やら落下物などで優に10回以上は死んでいても不思議ではないだろうと(^-^;)
あれでも生きていられるんだったら、この登場人物たちは絶対に死ぬことはないんだろうなと思ってしまって、逆に緊迫感がなくなってしまったのは結構致命的だったと思います。
マイケル・ドハティ監督が怪獣大好き!だからこその、あの距離感なんだとは思いますが……

しかし、このように欠点がはっきり見えていたとしても、どうしても嫌いになれないところも含めて、とても共感する部分が多いレビューでした。
私もなんだかんだ言って、この映画大好きです!(笑)

カミツレ