「本物の友情は親切な顔をして近づいてこない」志乃ちゃんは自分の名前が言えない 佐分 利信さんの映画レビュー(感想・評価)
本物の友情は親切な顔をして近づいてこない
なぜこのタイミングでこの作品をNHKが放映したのか。劇場で鑑賞した5年前は気づかなかったが、脚本は足立紳である。23年度下期の朝ドラの脚本を担当している。
彼の脚本には特別な人が登場しない。ハンディキャップがあるからと言って、「普通の人」よりも忍耐強かったり、粘り強かったりするわけではない。往年のスターにも自分をコントロールできない面があったりもする。
そして、最初から親切で優しい顔をした友情も描かれない。むしろ、人の心の中へずけずけと入り込んできたり、突き放したものの言い方をしたりする人間が、互いの弱い部分を理解し、強い思いで結ばれていくのだ。
ずるい人間、弱い人間が、ささやかかもしれないが、確かだと思える一歩を踏み出す瞬間を描かせたらいま右に出るものはいないのが足立紳という脚本家ではなかろうか。
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