「ブレイクスルー:志乃ちゃんの鼻水は美しい。」志乃ちゃんは自分の名前が言えない だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
ブレイクスルー:志乃ちゃんの鼻水は美しい。
開始3分くらいから泣いてた。目覚まし時計がなる前から起きて、名前をいう練習をしながら歩く志乃ちゃんがもういじらしくて切なくて、泣いた。
ミッシェルガンエレファントにブルーハーツ。
ウォークマンにカセットテープだし、携帯電話が出てこない。
加代ちゃんちのCD棚からニルヴァーナとオアシスのモーニンググローリーが見えた。
懐かしい。モーニンググローリーは今も聞いてるよ。
なんかすごく同世代感…と思ったら原作者が同い年でした。どうりで。
ミッシェルもブルーハーツもあたしにとっては友達が好きだったバンドです。でも何曲かは知ってて、世界の終わりと青空は知ってる曲だったので懐かしかった。しのかよと一緒に歌いましたよ小声で。志乃ちゃんの清らなか声が新鮮でよかった。
私世代の(田舎の)中学生男子は麻疹にかかるようにみんなブルーハーツにはまりました。タブ譜とアコギが先輩から受け継がれ、中学の文化祭では三年ともブルーハーツのコピーバンドが発生しました。
ミッシェルは故郷ではだいぶコアな音楽好きだけが知るバンドだったような。高校の友達が文化祭でバンドを組んで、ミッシェルやってたなぁ、知らん曲って顔してる子が多かったなぁと思い出しました。
私の思春期ど真ん中と、どうやら同時代らしい志乃ちゃんたちの世界。
15歳の気持ちと36歳の気持ちが混ざり合いながら、志乃ちゃん、加代ちゃん、菊池くんの一生懸命を見届けました。
名前が言えない程に上手く話せないこと、
ミュージシャンになりたいのに上手く歌えないこと、
みんなの中に居場所が欲しいのに空気が読めずにウザがられること。
私の悩みじゃないけど、私の悩みだと思った。
15歳の頃には上手くできないことが多くて、辛かった。
自分で自分を憎みすぎて辛かった。
壁を越えるやり方は、教えようがないんだよね。
1人づつ違うと思うから。
やり方もわからないまま、彷徨う世界はまさに荒野。
でも超えた瞬間はわからなかったけれど、がむしゃらに走って転んで血だらけになった果てに、超えていたことに気がついた。
できるようになったことも増えた。
今も荒野にはいるけれど、技が磨かれた気がする。
サバイバーとしての自信がついた。
大人になるってそうゆうことかなって思う。
荒野を生きていく術を持つ者。
さまよい、苦しんだ経験を内包している者。
志乃ちゃん、加代ちゃん、菊池くんは、今1つのブレイクスルーを果たした。
これからだよ。一歩づつ、ひとつづつ、自分のやりかたで。
キーワードは自分を好きになること。
菊池くんのことは、最初はこの子無理って思った。
掴みを決めようと初日の自己紹介からはしゃいだけど、だんだんクラスメイトにウザがられる様子が、痛々しく、可哀想だけど仕方ないって思った。
しのかよに割り込み、そのことが志乃ちゃんをよりいっそう傷つけはしたけれども、でも、その後はもがいてるなぁがんばれっておもった。志乃ちゃんにゾウリムシに謝れって言ったのは、かっこよかった。その通りって思った。きっと空気の読み方、これからわかるし、居場所見つけられる。つか、空気読めないままでも居場所は見つけられるよ。がんばれ。
加代ちゃんは本当に強いね。1人で舞台に立ち、歌いきった。逃げた志乃ちゃんを責めずに、待ってるよって言っていたように思った。そしていい詩を書いたね。魔法がなくても遠くに行ける。私もそう思う。
(でも魔法を歌った加代ちゃんは、そんなに音痴でもなく、もうちょい破壊的な音痴を貫き通す感じか欲しかった)
志乃ちゃんのコンプレックスは、そら辛いだろうなと思う。
菊池みたいなちゃかし方されたら、死にたくなると思う。
つか、よく学校来てるな、文化祭もよく来たなぁと思ってた。
志乃ちゃんは気の毒さと傲慢さと弱さと強さが思いっきり詰まっていて、情けなくってかっこよかった。
加代ちゃんの歌を聴いて、ついにみんなの前で自己紹介を叫んだ志乃ちゃん。
かっこよかった。垂れる鼻水も美しく、神々しく思った。
志乃ちゃんは気の毒なコンプレックスを持つ不憫な子ってだけでなく、加代ちゃんの音痴を笑う傲慢さもある。初めての友達を憎っくき菊池に取られそうになってヤキモチからしのかよからも逃げた。切ないだけではない、厚みのある描き方もとても良かった。
志乃ちゃん、加代ちゃん、菊池くんの3人とも演技うまかった。菊池くんの中の子だけ初見かな?
あんまりにも泣いて泣いて泣いて、帰宅してすぐに原作漫画をポチって読んだ。短編を映画的に上手く膨らませていて、映画の方がめちゃよかった。