「魔法が解けたシンデレラ」フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
魔法が解けたシンデレラ
AIに聴いてみたところとろ、【「フロリダ・プロジェクト」とは、2つの意味があります。ひとつは、アメリカ・フロリダ州でウォルト・ディズニーが開発したテーマパーク(ディズニーワールド)のプロジェクト名です。もうひとつは、英語の「project」が持つ意味として、低所得者向けの公営住宅を指します。映画「フロリダ・プロジェクト」は、このダブルミーニングをタイトルにしているのです。】だそうだ。
フロリダ・ディズニーランド側の安モーテルで暮らす貧困層と、ディズニーランドに子供連れで遊びにくる中間ファミリー層の間に横たわる、人の目には映りにくい格差を描こうとした作品なのだろう。是枝裕和の『誰も知らない』に大きな影響を受けたとショーン・ベイカー自身が語っているとおり、ディズニーワールド周辺の遊び場が、子供たち目線のみずみずしいタッチで描かれている。
テーマパーク周辺に立ち並ぶアイスクリーム屋やお土産屋、ファミレスなどには、お子様がいかにも喜びそうなけばけばしい装飾がなされているのだが、当然お金なんか持っていないムーニーちゃんとその貧乏なお友達は、ふざけ合いながらただそのショップの前を素通りしていく。底抜けに明るいフロリダの青い空と、原色チカチカの建物郡の見事なコントラストを映画は印象的に映し出す。
観光客以外の宿泊客のほぼ全てがホームレスという安モーテル“マジック・キャッスル”がムーニーちゃんとそのシングルマザーハーレイのお住まい。ゴルフ場客にブランド香水の押し売りをして糊口をしのいでいたハーレイだがにっちもさっちもいかなくなり、ついに禁止されている売春に手を染めてしまう。日本の風俗嬢も実はシングルマザーが非常に多いという話を聴いたことがあるのだが、アメリカではどうもそれがご法度らしいのである。
ディズニーランドのシンデレラ城を真似た“マジック・キャッスル”の優しき管理人ボビーをウィレム・デフォーが演じている。家賃の取り立てやルール違反には手厳しいが、宿泊客の懐事情をちゃんと理解していて、時にムーニー母親をはじめとする貧しい宿泊客たちの良き相談相手になってやるのだ。まるで、シンデレラにドレスや馬車を用意してあげたフェアリー・ゴッドマザーのような存在なのである。
しかし、ハーレイの売春行為が住民にバレ、児童相談所がムーニー保護のためやって来る。最期の挨拶に訪れたムーニーの腕を友人の女の子が引っ張って逃げ込んだ場所は...人身売買組織のヤバイ連中がウロウロしているとうわさのその場所で、はたしてムーニーちゃんとお友達は白馬に乗った王子様にめぐり合うことができるのでしょうか。せめてあのソーダ水好きの小児性愛者男にだけは再会しないよう、祈るだけなのである。