「いやぁ、恋愛って本当にいいもんですねえ……🙄」ファントム・スレッド たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
いやぁ、恋愛って本当にいいもんですねえ……🙄
1950年代のロンドンを舞台に、王室御用達オートクチュールデザイナーのウッドコックと、モデルとして彼に見初められた女性アルマとの、倒錯した愛を描いたサスペンス・ラヴストーリー。
監督/製作/脚本/撮影は、『マグノリア』『パンチドランク・ラブ』の、世界三代映画祭を制した天才ポール・トーマス・アンダーソン。
主人公レイノルズ・ウッドコックを演じるのは、『ギャング・オブ・ニューヨーク』『NINE』の、アカデミー主演男優賞を3度も受賞した伝説的名優、ダニエル・デイ=ルイス。
第90回 アカデミー賞において、衣装デザイン賞を受賞!
第43回 ロサンゼルス映画批評家協会賞において、作曲賞を受賞!
第83回 ニューヨーク映画批評家協会賞において、脚本賞を受賞!
いや想像してたのと違ーうっ💦
オシャレだけど中身のないヨーロッパ映画的な作品かと思いきや、変態的な愛を描いた谷崎潤一郎的な作品だった。
結論から言えば「こんな奴いるわけねえだろっ…。」という一言に尽きる。
めちゃくちゃ綺麗な映画だけど、好きか嫌いかで言えば全然好きじゃない。
音楽と衣装は最高✨
レディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドの作るピアノをメインに据えたオーケストラ的なフィルム・スコアは非常に心地良い。
そして、作品を彩る高級ドレスの華やかさ👗✨
美しい音楽と衣装を観ているだけで、とりあえず満足感を味わえる。
さて、肝心のストーリーですが、コレは一体なんと言って良いやら…。
前半は非常に緩やかに進む。
一流デザイナーとウェイトレスのシンデレラ・ストーリーかぁ、あんまり興味ないなぁ。とか思いながら鑑賞。
しかし、完璧に見えた2人の間に少しずつ暗雲が立ち込める。
些細な物音に過剰に反応するウッドコック。どんなところにも姉がついてくるという窮屈さ。姉の反対を押し切り、サプライズで喜ばせようとするも大失敗するアルマ。
なるほど、これはオシャレなラヴ・ストーリーじゃなくて、どこにでもある男女間のコミュニケーションをテーマに描いた映画なんだな、と理解。それなら結構好みの題材だぞ😆
と思っていたら、中盤でまさかのどんでん返し!
毒盛りやがったぞあのアマっ!☠️🍄
病に臥せるウッドコックを手厚く看病するアルマ。その対応に完全にやられたウッドコックは彼女を妻に迎える。
しかし、妻となったアルマはわがまま放題で…。
いやー、胸糞悪い話だわ〜。悲劇的なクライマックスが待っているんでしょう、これ。とか思っていると…。
はぁ…。はぁ…?はぁ…!?
こんなんありえますのん!?天才の頭の中ではコレでOKなのか?
弱った自分を看病したい、という妻の愛情にメロメロになったレイノルズ。無償の奉仕、コレこそが愛だ!という思いに至った。
うーん、なんか違う。
レイノルズは死んだ母親の影を常に感じていた。
死に近づくにつれ、愛する母の姿を克明に見ることができるようになる。だからこそ、自分に死を齎そうとするアルマを受け入れた。
うん、この解釈の方がしっくりくるかな。
レイノルズが毒キノコオムレツを食べた後の展開はアルマの妄想である、という意地悪な解釈も可能か。
タイトルの『ファントム・スレッド』、直訳すると「妄想の縫い糸」とかになるのかな。
勿論、コレは死んだレイノルズの母親が着ているウエディングドレスを指しているのだろう。
しかし、本作では、亡き人の一部、もしくは写真を上着の裏地に縫い込むという行為が重要な意味を持っている。
で、あればタイトルの「スレッド」とはアルマが自分の胸のうちにレイノルズの命を縫い込むことを指しているのではないか。
「倒れる前にキスしておくれ」というレイノルズのセリフ自体、アルマの妄想であり、彼も自分の好意を肯定し受け入れてくれる筈だ、という自らの妄執を胸のうちに縫い込んだからこそ、タイトルが『ファントム・スレッド』なのではないか?…とは考えすぎかな。
色々と考えたけど、実は単純にPTA監督の性癖が作品に現れた結果、あの結末になったような気がしてならない。女の人に毒を盛られて、動けなくなったところを看病されたい。思いっきり甘えたい。みたいな。うーん、ドM。
完璧主義者のウッドコックは多分監督のアバター。
流行りなんてクソだっ!というセリフは、『アベンジャーズ』みたいな娯楽大作が凄い興行成績を上げる映画業界ないしは大衆への批判に聞こえてならない。
今回ダニエル・デイ=ルイスの顔を初めて観たんだけど、すごくホアキン・フェニックスに似ていると思った。
ホアキンとも度々仕事をしているPTA。ホアキンとかデイ=ルイスとか、顔の下半分がカックーンってしている俳優が好みなのかな。
まぁ自分は好みじゃないけど、こういうのを好きな人も沢山いるんだろう。
鑑賞中、なんとなく『ゴーン・ガール』のことが頭をよぎったんだけど、自分は断然『ゴーン・ガール』の方が面白かったなぁ。
まあなんにせよ、こういう映画が作れるんだから、さぞ女にモテるんだろうなPTA。
こんにちは。
心理的に怖い映画ですよね。この手の映画が大好きです。
「タイトルの「スレッド」とはアルマが自分の胸のうちにレイノルズの命を縫い込むことを指しているのではないか。」
なるほど、そうともいえる、と納得です。
今晩は。
”レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドの作るピアノをメインに据えたオーケストラ的なフィルム・スコアは非常に心地良い。” 同感です。
私は今作は、完璧主義者のウッドコックが、初めて自ら意匠をデザインした衣装を身に着ける無垢なアルマに対して【自分が意匠したドレス】を自分の思うように着こなしてくれる女性に対しては、【全てを捧げる】事で、敬愛の意を表したのであろう、と思いながら観ていました。
自我が芽生えたアルマは、ウッドコックの世界に捕らわれる事無く、新たな世界を目指します。それを許容するのが、毒キノコ入りの食事を【莞爾の表情】で口にするウッドコックの姿であると思いました。
怖いですが、それこそがPTAの美意識だと、私は解釈した作品でもありました。