ゲティ家の身代金のレビュー・感想・評価
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イタリア式誘拐狂想曲
実話ということだが、この大富豪がおよそ落語にしか出てこないような極端に因業な人物で、現実の人間とは思えない。金がないならともかく、唸るほど持っていながら払わない。表明する理屈も、テロリストの要求を政府が拒絶する際に言うならわかるが、親族が命の危険にさらされている時に口にするようなものではない。
細部もよくわからないことが多い。顔を見られた犯人の一人が殺された経緯とか、人質の売り買いをした二つのグループの性格や“赤い旅団”との関係とか。
最近実話ものが多いが、映画そのものの評価とは別に実話であることによって価値が水増しされている部分はあるように思う。
ロマン・デュリスは「タイピスト!」や「ムード・インディゴ」の時も悪党づらだなぁと思っていたが、今回本当に悪役だった。
家族主義と金儲け主義へのアイロニー
アメリカ映画は自分と自分の家族さえよければ他は関係ないという価値観で溢れ返っているようで、家族だけのハッピーエンドがそのまま世界のハッピーエンドであるかのように描かれることが多い気がする。
しかし本作品では、結局は家族が大事みたいなシーンもあることはあるが、金儲けと家族という、アメリカ人の最も関心の高い二つをいっぺんに笑い飛ばしているように思えてならない。この映画はリドリー・スコット一流のアイロニーではなかろうか。
人間の欲望は無尽蔵だ。金持ちはどれだけ金持ちになってもまだ足りないと、ゲティ老人は言う。もちろん欲深いのは金持ちばかりではない。自分さえよければいい、今さえよければいい、金さえあればいいというのが現代の風潮だ。いや、現代だけではなく、昔からかもしれない。原始貨幣経済が始まったときから同時に拝金主義も始まった。何でも無限に交換できる貨幣は、人間の欲望を集約する。
本作品の原題は「All the Money in the World」である。直訳すると「世界中のすべてのカネ」だ。どれだけカネを集めても飽き足りない金持ちに対する揶揄なのか、それとも人間にとってのカネそのもののありようを嘆いてみせているのか。
登場人物が家族主義と金儲け主義の間で揺れ動くさまは哀れであるが、映画は必ずしも彼らを否定してはいない。どの人物にも激しい執着があり、人間エネルギーのドラマがある。そのどちらの主義にも属さないゲティ3世が、ただ生き延びるために様々な手段を試みる場面は秀逸で、それこそがリドリー・スコットの描きたかったことのような気がする。状況が目まぐるしく変わるので、見ていて飽きなかった。
お金があってもなくてもやっかい
儲けるのは簡単。金持ちになるのは難しい。
資産が数えられるのは金持ちとは言わない。
なんとも名言がたくさんありましたが、お金って何だろう?お金持ちってなんだろう?と思った。
あっても使えなくては意味がないのに、お金を持って死ねないことをまざまざと見せた映画。
あの時代だから誘拐が成立して、あの時代だから生きてかえって来れたんだと思う。
映画は展開が早くて、結論がわかってるんだけど、おもしろくみれた。
教訓とするなら、お金持ちのゲティさん、生きる目的を間違えてしまったんだろうと。
お金は手段にしかならないんだということかな。
金にとりつかれた哀れな人間
これは実話にもとずいた話だそうだ
大富豪の孫が何者かに誘拐され身代金を要求されるが
その爺ちゃんは「金は払わない」と突っぱねる!!
そこから話がはじまる「ゲティ家の身代金」
物語を観て 人間はどうしてこうお金に執着するのか
お金欲しさに人の命なんてどうでもいいのかと
思ってしまう
しかし世の中には金銭のことで殺傷事件が後をたたない
悲しいことである
この物語では損得で動くやからが多く存在するが
誘拐されたポールの母親ゲイルの存在に救われる
誘拐前の話があり
ゲイルは夫と離婚するのだが
その時に慰謝料はいらないから監護権(日本では聞きなれない
言葉だが親権のようなものなのかな?)
くださいと大富豪のじいさんに言うのだ
母親だったらその気持ちが痛いほどわかる
よくぞ言ったと私は思った
しかし彼はその言葉が理解できない
お金がいらないなんて信じられないと言う
気の毒だったのは誘拐されたポール
この話はネタバレすると面白さが半減するので
やめますが
彼こそ金のとりつかれた人間により
犠牲になった哀れな少年です
ストーリー展開は面白く全編緊張が走り
最後までドキドキだった
さすが リドリースコット!!
ゲティを演じたクリストファー・ブラマーは
いかにも大富豪と言う貫禄あるお爺さんで良かった
しかし 本当はこの役はケビン・スペイシーが
演じているかもしれなかったと聞いてまたビックリ!!
ケビンだったら どんな富豪を演じていただろうか
それも観てみたかった
大金持ち
目が覚めました
身代金を拒否する世界一の富豪で守銭奴(ケチ)の実話
実話だが、製作陣たちが細部まで調査したと言うだけあって予想できない展開に、本当にこんなことが起こったのか?と思わせられるストーリーで目が離せない。思わず調べてみたくなる作品。
で、Wikipediaを見てしまったが、ゲティ家は結構奥が深かった。誘拐されたゲティ3世は16歳で、約5ヶ月間もの間誘拐監禁されていた。生きて帰って来れたのは、本当に奇跡だった(映画でも何度も、もうダメなのかと思わせるシーンがあった)。幸運の持ち主と言える。
J・P・ゲティが生涯を掛けて買い集めた美術品が、カリフォルニア・ゲティ美術館にあるようなので、見に行きたくなるが、少々遠い。
淡々と
一代で身を立てた爺さまがゴネてポックリ。諸行無常也。
イタリア南部の、とても伊達男とは言えないむさいオッサンたちが沢山出てきます。
最後の山場もさらりと描き、あっさりと脱出。「ミッドナイトエクスプレス」を想起した。
焦点の定まらない物語。誰に向けて、何を伝えようとしているのか?
今回も掴みどころの解らない作品でスコット御大に煙に巻かれた思いが残る。
自分の稼いでる金に翻弄されてしまっている人生、本当は自分の意思と違...
ブラック・コメディにするべきだった
リドリー・スコットの硬派で手堅い演出と、役者陣の充実した演技とで、なかなか見ごたえのあるクライムサスペンスであり心理サスペンスだったかな、とは思う。ただ、どうしても貧乏人の僻み根性が出てきてしまい、途中からは金持ちが繰り広げる常識外れのパワーゲームにうんざりしてくる自分に気づいてしまった(同じ理由で「ウォール街」も苦手)。最も常識人であろうと思われた主人公ミシェル・ウィリアムズさえも中盤からは金持ちの価値観に毒されてしまい、誘拐された孫には悪いが、もう勝手にやってろよと思うしかなくなっていた。作り手もそれを危惧してか、冒頭で「これは大金持ちの普通ではない家族の物語だ」というようなエクスキューズを掲げてくるが、そんな言い訳じみた文句を映画の冒頭で語る時点で映画の弱気を感じてしまってよろしくない。
クリストファー・プラマーの圧倒的存在感と演技力が作品をぐっと引き締めるものの、ドケチな偏屈ジジイというにはプラマーの威厳が立ちすぎて、終盤でマーク・ウォールバーグに真っ向から逆襲されてもプラマーの威厳の前では青二才の負け惜しみにしか見えないほど。いっそのこと、セクハラ騒動で本当の下衆だということが証明されたケヴィン・スペイシーが演じた方がきな臭くてよかったのかも?なんて思ったり。いやでもプラマーは作品の救世主。80歳を過ぎてなおフットワーク軽く9日ですべてを仕上げてしまうあたり、熟練を感じずにいられません。
これだけ「カネ・カネ・カネ」と言っている映画の裏側で、セクハラ騒動だけでなく、撮り直しのギャラにまつわる騒動もあって、ハリウッドのカネ問題まで浮き彫りにしてしまったこの作品。株を上げたクリストファー・プラマーと、同情を買ったミシェル・ウィリアムズ、そして撮り直しのギャラを釣り上げて批判され、後出しジャンケンの如くセクハラ撲滅運動にギャラを全額寄付したマーク・ウォルバーグという、3人のそれぞれの立場を見るだけでも、金って人をおかしくさせるよね?と、作品とは関係ないところで思わずにいられなかった。
リドリー・スコットの手堅い演出を褒めてはみたものの、私個人の意見では、この映画はブラック・コメディとして製作されるべきだったと思う。登場人物はクセ者だらけで、特に大富豪のゲティ氏なんてブラック・コメディにお誂え向きのキャラクター。それ以外の人物も(誘拐犯含めて)それぞれにズレた人たちが多く、金持ちのズレた価値観を笑いにするブラック・コメディにしてくれればすんなり受け入れられるのに、それを大真面目に演出しているからただズレた人たちで終わってしまうという皮肉が生じていたように思う。同じ題材でも、コーエン兄弟あたりがブラック・コメディとして仕上げていたら、きっと面白かっただろうなぁと、見終わって真っ先にそう思った。
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