「滑る世間はバカばかり。 トーニャ・ハーディングに幸あれ…。」アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
滑る世間はバカばかり。 トーニャ・ハーディングに幸あれ…。
実在のフィギュア・スケーター、トーニャ・ハーディングの半生を描くブラック・コメディ。
主人公トーニャ・ハーディングを演じるのは、『アバウト・タイム 愛おしい時間について』『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビー。なお、ロビーは製作にも名を連ねている。
トーニャの元夫、ジェフ・ギルーリーを演じるのは、『キャプテン・アメリカ』シリーズや『オデッセイ』のセバスチャン・スタン。
幼少期のトーニャを演じるのは、『gifted/ギフテッド』のマッケンナ・グレイス。
第90回 アカデミー賞において、トーニャの母親ラヴォナを演じたアリソン・ジャネイが助演女優賞を受賞!
第75回 ゴールデングローブ賞において、ジャネイが助演女優賞を受賞!
第23回 放送映画批評家協会賞において、ジャネイが助演女優賞を、ロビーがコメディ女優賞を受賞❗️
1994年に起こったフィギュア界の大スキャンダル、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の中心人物であるトーニャ・ハーディング。
この事件や、その後に行われたリレハンメルオリンピックでの靴紐の一件などは日本でも大々的に報道されたらしく、当時を知る世代にはお馴染みの人物のようだ。
自分は本作でトーニャやこの襲撃事件を知ったのだが、現実でこのような出来事が起こっていたことを知り、とても驚いた!😵
まさに事実は小説よりも奇なり。
毒親からの虐待をきっかけに、人生が大きく狂ってゆくトーニャ。その姿は非常に痛々しい。
シリアスな社会派ドラマとしても成立する内容だと思うが、それをブラック・コメディとして成り立たせた大胆さは見事!
DVの描写はかなり生々しくて、ドキッとしてしまうほど暴力的なんだけど、それでもどこかにお笑いの要素が含まれており、エグ味が上手い具合にデトックスされている。
笑っていいのかわからないのに、ついつい笑顔になってしまうという…😅
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のように、当時の流行歌に物語を語らせるミュージック演出。
登場キャラクターごとに異なる言い分を並列的に描き出す『羅生門』スタイル。
『ハウス・オブ・カード』のように、主人公が第四の壁を破り観客に語りかけてくるという仕掛け。
こういった尖った演出がうま〜くブレンドされており、非常に洒落た映画になっているのも良い。
他ではあまり観たことのない、この映画独特の演出技法が作品にフレッシュさを与えている。
「完璧なアメリカの家族」像をスケーターに求めるフィギュア界。トーニャの型破りな演技は、それにそぐわないとして低く評価されてしまう。
しかし、衝動的で攻撃的、豪快で荒々しく、スキャンダラスなトーニャの姿はある意味ではアメリカそのもの。
「完璧なアメリカ」を求める業界に対し、「完璧なアメリカ」の姿を提示して見せたトーニャが業界から追放されてしまったというのは、なんとも皮肉な物語であります。
事件の真相は藪の中。
確固たる唯一の真実は、トーニャを取り巻くバカどもがお粗末な暴力事件を起こし、彼女から永遠にスケートを取り上げてしまったということ。
あまりに悲惨な顛末で、コメディ作品じゃなかったらとても直視できそうにない…。
とりあえずあのデブは許せん💢
エンドロールに流れる当時の映像。
あの虚言癖のデブとか、鳥を肩に乗せている鬼婆とか、マジで映画のまんまでビビる💦すごい再現度。
トーニャやジェフの再現度も素晴らしい。
本作のマーゴット・ロビーは本当に頑張っているし素晴らしい!✨トーニャの15歳〜中年までを堂々と演じきっている。
…が、彼女はどう見たって15歳には見えないっ💦
ここだけは本作の中でどうしても気になってしまうポイントだったなぁ。
もちろん、この作品だってトーニャへの同情的な視点から作られた物語であってこれが事実ではない。
もしかしたら、本当にトーニャが襲撃に関わっていたのかも知れない訳だし。
とはいえ、やっぱりトーニャには同情せずにはいられない。これからの彼女の人生に幸多からんことを🙏