「興味本位で観てもいい。破天荒なトーニャが愛おしくなる」アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
興味本位で観てもいい。破天荒なトーニャが愛おしくなる
もちろん世代にもよるのだが、"ハーディング"という名前で思い出すのは、"ナンシー・ケリガン襲撃事件"。そして本番のリレハンメル五輪で、審査員席に片足を乗せて泣きながら抗議する姿…。
世界が注目するオリンピックで、とてつもなくスキャンダラスな出来事を起こしたカノジョに、ニュースメディアはもちろん、日本のワイドショーも多くの時間を割いていた。30代以下の世代には、"何だそれは?"と思うだろうね。
本作は、その事件の真相が明らかになる。
人によってはハーディングが、"ナンシー・ケリガン襲撃事件"の<首謀者>と勘違いしているかもしれない。もしくは、ダンナが襲撃したと勘違いしているかもしれない。"どれも間違い"。
観ればわかるのだが、真相はとんでもないバカバカしい話なのだ。
貧しい家庭に育ったトーニャは、練習のためにアイスリンクを貸し切れる裕福な家庭に有利なフィギュアスケートの世界で、まさしく"労働者階級の星"なのである。自分の才能と努力だけで、アメリカ人女子フィギュア選手で初めてトリプルアクセルに成功。2度の冬季五輪に出場している。
この映画を観終わると、ハチャメチャな言動でお騒がせな、バカ娘トーニャ・ハーディングに呆れるばかりなのだが、それと同時に少なからずカノジョに同情したり、共感したり、感動したりさせられる。良くも悪くも魅力的な人間である。
そんなトーニャを演じるのは、マーゴット・ロビー。「スーサイド・スクワッド」(2016)で、女性の悪役キャラ"ハーレイ・クイン"を演じて大人気になった。そのまんまトーニャ・ハーディングの破天荒ぶりと重なって見えるので、なんとも…(笑)。
また、トーニャのために働き続け、フィギュアスケートに専念させた母親ラヴォナは、トーニャ以上に破天荒な女性だ。そのラヴォナ役のアリソン・ジャネイが、第90回アカデミー賞の助演女優賞を受賞している。
興味本位で観てもいい。そのほうが裏切られるので、むしろいいかもしれない。トーニャが愛おしくなる。
(2018/5/14 /TOHOシネマズシャンテ/シネスコ/字幕:中沢志乃)