劇場公開日 2018年7月13日

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「いや、めっちゃ良かった。まさかの群像劇。」劇場版ポケットモンスター みんなの物語 ねーやんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いや、めっちゃ良かった。まさかの群像劇。

2019年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

注意:当方ポケモン門外漢。

従来のポケモン映画とは全く趣旨を変えた、それも前作「キミに決めた」以上にスタイルの方向性を変更した問題作とも言える作品。
伝説のポケモンを狙う巨大な悪役との熱いバトル!ポケモン映画にそれらをしか求めない層は、さぞ面食らったことだろう。

今回は私のような門外漢こそ、ニュートラルにアニメ映画として見られる構成だっただけに、ポケモンファンが、これをどう捕らえるか見物。

「みんなの物語」というサブタイトルは、まさにそのまま内容に反映され、一人の主人公の抱える問題解決を強引に「これはお前ら」だと訴えるのではなく、群像劇と言う形態をとることで、さまざまな主観やトラウマを文字通り観客それぞれに当てはめる、やや強引だが、面白い手法である。

群像劇は、ただでさえ1つ1つの物語が薄くなるため、それを嫌う人が多くいる。或いは少しでもシナリオが複雑化した瞬間に理解を放棄する人もいる。
要するに基本的には庶民映画には向いていない手法なのだが、本作は児童向けアニメ映画である。
極端な話、悪い言い方かも知れないが、仮に主人公が一人だったとして、そもそも物語は簡単で薄いのである。

弟に頼まれポケモンを探す、走ることをやめたギャル。姪には甘いが嘘つき人生のオッサン。コミュ障の若き博士。ポケモン嫌いの婆さん。歴史的な葛藤を抱える市長。とある秘密を持つその娘。そこへ訪れる風来坊と電気ネズミ。

割と群像劇が好物の私としては、もうオープニングで「これは傑作の匂いがする!」と興奮していた。

確かに、1人1人の物語は軽いし薄い、そうじゃなきゃ児童には伝わりづらいし、何より、それらが後半で絡み合い一本化し、かつそれぞれが抱えたトラウマがちょっとずつ解決するというやや複雑なカタルシスは、理解するのも困難だろう。
これくらいのアンサンブルが丁度良く、個人的にはケーキバイキングを楽しんだような感覚に近い。

ポケモン映画が、ファミリー向けもしくは「大人も楽しめる」ではなく、あくまで児童向け映画だからこそ、私はこの作品に製作としての正当性を垣間見た気がする。

ねーやん