「異なるデザインが共存する、ハイブリッドアニメに目を見張る」スパイダーマン スパイダーバース Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
異なるデザインが共存する、ハイブリッドアニメに目を見張る
実写版をたくさん見てきたが、ご存知コミックが原作なので、(映画では)"初アニメ化"という事実が意外すぎる。アカデミー賞の長編アニメーション作品賞はダテではない。スピード感ある映像と音楽、まるでコミックのページをめくるかのようなコマっぽい展開と、アニメでは珍しい"吹き出し"のセリフが素晴らしい。
パラレルワールド(同時に存在する異次元世界)をつなぐ、ワームホールから複数のスパイダーマンが現代のニューヨークに飛ばされてくる。
主人公は「アルティメット・スパイダーマン」(2012-2017)の2代目スパイダーマンである黒人少年マイルス・モラレス。初代ピーター・パーカーが戦いに敗れて亡くなった設定で始まる。
もともと原作の"スパイダーバース"自体が雑誌をこえた、世界各国にまたがる壮大な企画なので、100人以上の世界中のスパイダーマンが出てくる。これをどうやって映画にするのか!
映画版では全部で6人(5人と1匹)のスパイダーマンが登場する。それぞれのキャラクターデザインが異なり、グラフィックイラスト的なものや日本アニメ的なものなど、それを同フレーム内で動かすというハイブリッドなテクニックは、目を見張るものがある。
先行限定上映でIMAX字幕版を鑑賞。そのあと4DX吹替版で再確認したので、細かいところまで実によく計算されていることがわかる。
スパイダーマンの"ウェブ・スイング"の動きがあるので、もちろん4D系のほうが楽しい。また先に述べたようにマンガのような"吹き出し(セリフ)"があるため、吹替版でセリフを耳で聞いたほうが、作品全体の世界観が楽しめる。もちろん"吹き出し"は日本語に翻訳されている。
さて、スパイダーマンの生みの親、スティーヴ・ディッコが2018年6月に、また11月にスタン・リーが立て続けに亡くなったため、両者に捧げられた作品でもある。公開中の「キャプテン・マーベル」にも、"Thank you Stan"と添えられている。
いつものスタン・リーのカメオ出演は、主人公のマイルスがスパイダーマンの仮装スーツを買う、スパイダーマンショップのオーナーとして本人役で登場している。
エンドロールでの、オマケは異次元を越えられる装置を腕に付けているシーンだったので、スパイダーバースはシリーズ化していくのだろう。
また最後にスタン・リーの言葉が流れる。
"That person who helps others simply because it should or must be done, and because it is the right thing to do, is indeed without a doubt, a real superhero."
"それが行われるべき、または行われなければならない、正しいことだという理由で、他の人を助けてくれる人こそが、間違いなく本当のスーパーヒーローなのです。"
スタン・リーありがとう。合掌。
(2019/3/2/TOHOシネマズ日比谷/IMAXシネスコ/字幕:佐藤恵子)
(2019/3/17/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/吹替翻訳:小寺陽子)