「アクション鳥肌!だが緊張感は薄い」僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 2人の英雄(ヒーロー) Tyoro!さんの映画レビュー(感想・評価)
アクション鳥肌!だが緊張感は薄い
作中、アニメ版と同様のスタイリッシュかつ迫力のあるアクションシーンが随所多様に含まれており、いい意味で安心できた内容でした。
その半面、ストーリー面でのシリアスさが薄め、かつメンバーたち(特にオールマイトと緑谷、爆豪、轟のルーキートリオ)の性能が兎に角安定しすぎており、取り敢えず負けることはないだろうなという気持ちで観れてしまうことも、緊張感の低下に繋がっていると思いました。ラストシーンもオールマイトは機能時間に制限があるとはいえ、『ちょっとまずいな』程度の言葉を吐くだけでなんだかんだ持ってしまうので、(良くも悪くも)全然不安になりません。
とりわけ、(*ネタバレを含むので注意)映画のストーリーについてですが、キーパーソンとして、現在は優秀な博士であるオールマイトの昔の相棒と、その娘であるヒロインが登場します。彼らは'無個性'でありつつも科学開発を行ってヒーローをサポートする存在で、途中ヒロインが無個性であることを緑谷に教える場面があります。
この時に元々無個性であった彼であればその苦しさを理解できるため、ヒロインが共感されながらそれを乗り越えてゆく描写が出てくるんだろうなと思ったのですが、彼女自身が(本当に一切これっぽっちも)無個性であることに対してコンプレックスを抱いていない、克服している状態で話が進むため、胸が切なくなるシーンはほとんど出てきません。私としてはそういった成長してゆく感動シーンをアカデミアらしく入れてほしいなと思っていたのですが、泣けるところはなく、ちょっと残念でした。
また博士が『個性を増幅させる機械』を発明しており、それを取り戻そうとする場面があります。そこを我が娘に目撃され、険しく問い詰められるのですが、そもそもなぜその機械を必死な思いで取り戻そうとしているのかというと、オールマイトの失われつつある個性を回復させるためである、ということを告げます。確かに彼にとっても最高のヒーローであり友であるオールマイトのためにしていることだと主張するのはわかるのですが、それは今目の前にいる娘のため、とかそういうものではないのです。私は最初に『あっ、無個性であるこの娘のために個性を発現させようとしてこの機械つくったのかな』と思ったのですが、別にそういうわけではなく。せっかく父親の元まで愛娘が敵をかいくぐってやってきたんだから、ここで'親子ならではの'衝突、葛藤があってもよかったんじゃないかなと感じました。そうじゃないと娘がわざわざやってくる価値も薄くなるし、無個性だってなんとかできるっていうこの作品の根本のアピールにもなりづらいのではないかと。(ただ緑谷くんも個性をバンバン発揮している現状、もうそういった表現は必要ないのでしょうか。)このシーンが緑谷へのワンフォーオールを受け継いだことへの責任を助長するためだけに用意されたのであれば納得できるのですが。
最後になりますが、総じてアクションシーンに対する評価は非常に満足です。クライマックスシーンではあのアカデミアならではの熱くなる戦闘描写と音楽に自然と鳥肌立ちました。(オールマイト×緑谷くんの共闘は待ってた!)ただ、ストーリー面における感動は薄く、泣けるような場面は皆無だったため、そこだけ少しでも入れてくれれば、個人的には完璧だったと思います。