「細部を詰めないとウソはウソくさいまま」ルームロンダリング うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
細部を詰めないとウソはウソくさいまま
主役の女の子の存在感と、不思議な設定、心霊を扱いながらコミカルにまとめるというテイストが、うまくはまった映画だと思う。きっとうけつけない人はクソミソにけなすだろうけど、私は好き。好きだから、不満もいっぱいある。
見どころは、やっぱり池田エライザの醸す空気感だろう。彼女の存在無くして、この映画は完成しなかったんじゃなかろうか。幽霊が見えるという能力を、霊能力みたいな特別なちからに設定しないで、人よりちょっと眼がいいくらいのことに描いてある。
ただ、見ているうちに「どうして、この子は行動しないんだろう?」というもどかしさを感じてしまう。そう、この映画、ねちっこく静かで、テンポが悪い。生い立ちと特殊能力の説明で時間が過ぎていく。なぜ、彼女がワケあり物件に住み続けるのか、そこのところが全然見えない。てっきり、『ルームロンダリング』というタイトルからして、霊と向き合って成仏させるちからをコミカルに展開するものとばかり期待していた。
ぎゅっと縮めたら、90分以内に収まっただろうと思えるシーンがたくさんある。小手先の特殊効果を施している余裕があったら、もう少し細部を詰めてほしかった。いちばんダメだったのは、TKOの木下さん。まず警官に見えないうえに、行動がおかしいところだらけで、悪目立ちする。強く印象付けたかったのなら、他の俳優さんでもよかっただろうに、すごくもったいないキャスティングだ。
オダギリジョーは、相変わらず不思議な大人を「味」で表現している。こんな人物、絶対に身の回りにいるわけないのだが、彼ならあってもおかしくないかなと思わせてしまう。『湯を沸かすほどの熱い愛』の時も『重版出来!』の時も、妙な説得力を感じさせる。お母さん役のつみきみほ、雰囲気のあるいい女優さんだと思う。齢のとり方がすごくいい。
全体的に、俳優さんたちの頑張りのおかげで出来が良くなったが、脚本段階のおかしな行動原理が納得できないままだったと思う。