黒い箱のアリスのレビュー・感想・評価
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「あの時ああしていれば・・・」という悔恨を解消する摩訶不思議なブラックボックス
最初に見た時はバイオレンス描写は気にくわないが建築的趣向と絵的構成感にいたく感動し、アートムービーとして強く印象に刻み込まれた。
今回で3度目となるが、バイオレンスサスペンスのシナリオ理解に集中し、本作のテーマは「ある交通事故がもたらした家族の不幸と親子間の不和、被害者家族の不幸を和解するためのファンタジックな試み」という結論に至る。
その手段こそが全く唐突に表れたブラックキューブ状のタイムマシ―ン!
大雑把に言えば相互の家族が「復讐と防御」という形でバイオレンスを相互にし合うわけだが、それではらちが明かないし、重い犯罪行為が残るだけ。
それらの殺戮行為が全く起こらない方法が一つだけあることに最後になって気付き、あの「摩訶不思議な黒い箱」に一縷の希望を託す・・・・・という流れ。
各映画レビューサイトでは平均点は低いし、エンタメ趣向としては全然物足りない内容なのだろうが、個人的には最初に触れたアートムービー的にまず満足しているし、シナリオ構成としても今回合点できたので、揺るぎない名作として記録しておきます。
「自らの強い意志で動かす未来的義手」を最後になって使いこなせるようになったアリスが明確な強い決断で飛び込んだ黒いボックス。
そのひそかに森に佇む黒いボックスに重なるエンドロールを今回もつい最後まで見てしまった。
静かなSFミステリー
スペインのSF+ミステリー映画。
義手の少女、喋る犬、森の中の一軒家、黒い箱とキーワードを並べただけで不条理な感じがして良い。
人の表情を捉えた長回しのカメラワークと詩的な風景の美しさが印象的。
不条理感漂う設定と違って話や伏線は分かりやすく「何かよく分かんない不思議な話」という感じではないので、人はあまりに選ばないかも。
ただ「黒い箱」や後半のアリスの展開で説明不足な部分もあるのでそこは観た人が想像力を働かせるしかない。
アリス以外の登場人物も個性的で全体的な雰囲気は好み。アリス役ロウェナ・マクドネルが義手もあってかたまにアリータに見える。
無駄にグロい・・・
母を事故でなくした父娘。田舎の豪邸に住む親子の元に怪我をした姉弟が迷い込みます。そして森の中に唐突に表れた黒い箱は、その姉弟を殺すように娘に指示をして・・・という良く分からない物語。
設定は面白いですが、自主制作なみの映画のように感じました。
肝心の黒い箱はチープ過ぎて驚きます。また、何故そこにあるのか?何をするものなのか、謎を明らかにするどころか追及すらされません。
殺人シーンが幾つか出てきますが、無駄にグロく撮影されていて、制作者の余計な趣味趣向を見ているようで、嫌な気持ちになります。
不思議で不条理な世界観は上手に作れているようにも思えるので、鑑賞する側の評価基準によるのかもしれませんが、私には高い評価が難しい作品でした。
含みを持たせ過ぎてサプライズ感が削がれたのが残念
右手を失った少女アリスは父アダムと森の中にある家でひっそりと暮らしていた。アリスは不思議な女の子で、人間の言葉を発する装置を付けた犬ベアトリスを母と慕い、義手の訓練に飽きると外へ散歩に行く毎日。ある日アリスは森の中で奇妙な黒いキューブを発見する。彼女の気配に反応して起動したキューブに思わず手を突っ込むアリス。その手には紙切れが握られており、そこにはアリスの筆跡で『彼らを信頼するな」と書かれていた。同じ頃アダムは森の中で傷だらけの姉弟エリカとポールを見つけて自宅に連れて帰るが、その日から家の周りに不審な気配が近づいてくる。
冒頭から不穏な空気を帯びた映像で期待感を煽りまくりますが、これが実に残念な作り。極力セリフで語らない演出には好感を持てるのですが、それを活かすには演出が今一つ舌足らず。含みをもたせ過ぎたプロットが逆に最後の展開を想定内に抱え込んでしまい、あーそれね!と妙に納得してしまいました。そこは観客をミスリードするトラップを用意して欲しかった。スペイン映画なのにセリフが全部英語というのもちょっと物足りない。恐らくは『エクス・マキナ』的な雰囲気を狙ったのだと思いますが、ほとんど全編スタイリッシュなデザインの邸宅の中だけで展開、シンメトリーを強調した鋭利で冷たい映像は現代建築好きには眼福、そこだけは評価したいと思います。
青とピザとトム・ハンクス
不思議な世界観だった。森の中の一軒家。しかも両側がガラス張りのシースルーという作りで、どこかの前衛的な建築家が建てたかのような家。少女アリスは交通事故で母と右腕を失い、最先端の義手を装着して練習する毎日。太い青、中くらいの緑、細い赤の円柱が印象に残る。人間の言葉をしゃべる装置をつけている犬を“ママ”と呼ぶアリス。どことなくソフトバンクのCMを思い出させる白い犬だ。そんな不思議な舞台設定のうえに、ストーリーまで不思議感がいっぱい。
全体は5つの章立てになっていて、序章として黒づくめの男が父アダムをバットで殴り殺す映像がある。これは最終的に父親が殺されるということか?と、興味津々になるものの、3章あたりで父親が刺殺されるのでびっくり。タイムループものを扱うにしても殺され方までは変わらないだろうと、『オール・ユー・ニード・キル』なんかを思い出した。また、犯人の動機がさっぱりわからず、妙な邸宅に住んでいるから金持ちなんだろうと思っていたら、母も死亡した交通事故が原因となっていたのだ。
父が森で倒れている姉弟エリカとポールを見つけたことで、事件が展開する。一方で、アリスは身長くらいある黒いキューブに遭遇し、そこでメモを見つける。自分の筆跡で「THEY ARE NOT TO BE TRUSTED」と書かれたメモ。次の日には自分の声が録音されているウォークマンを見つけるのだ。「ポールを殺せ。ついでにエリカも殺せ」と、にわかに信じがたい内容。さすがに思いとどまったアリス。やがて、父もベアトリス(犬の名)も殺され、失意のもとタイムマシンのようなキューブに願いを込めるのだった・・・。
アリスが戻ったのはエリカが恋人デヴィッドに殴られているシーン。ポールは耳をふさいでいる。どう考えてもヤラセの暴行なのだが、このデヴィッドが父親を殺すのだと気づいたアリスは家に戻り、ウォークマンを聞いている自分を閉じ込め、自らがポールを殺す。しかし、エリカの返り討ちに遭い、アリスは殺されてしまう。と、閉じ込められてたアリスが嘆き悲しむ父親の前に現れ、タイムマシンについて語るのだった。
驚いたのは黒づくめの男がデヴィッドではなく、父親アダムだったこと。要するに過去から来たアダムが現在のアダムを殺し、ついにはアリスがデヴィッドを殺すのだ。従来のタイム・パラドックスとしてはかなり乱暴な展開。同時に同じ人物がいること自体、SFとしては違反してるというのに、自分を殺すってのが信じられないほどの暴挙なのだ。そんな違反づくめの内容だったけど、建築物の幻想的な美しさや鳥のさえずりなどの効果音が心地よかったので、及第点と言えようか・・・。
不穏な空気感
ジャンル系作品の映画祭で好評価になりそうな作品だ。
簡単に言うとタイム・パラドクスだが、黒い箱の正体や、途中で登場する若い姉弟の詳しい正体など、それっぽい描写の数々が描かれる割には何も明確に判明しないのである。主人公のアリスと観客が同じ立場で黒い箱と向き合える様な構成になっているのかもしれないが、最後まで不穏な空気感が異様なまでに漂う意味深な作品だった。
テンポ良く描けば恐らく30分弱で終わりそうな話だと思うが、本作は一つ一つの描写が長尺であり、それが独特な世界観を醸し出しているのである。それらの描写の数々は大変気に入っている。俳優陣の演技力もなかなかだが、この監督の今後の作品にも興味が湧いてくる。
合わなかった
キャラクター全員に人間味を感じないのは、それを意図してるからだと思う。でも全員行動の理由が全く分からない。ポールのことが好きとか急に出てきて「は?」ってなるし、「なんでそこでそう動くの?」っていうシーンばっだし、結局あの姉弟はなんだったのかも分からない。なんで不審者を家に入れた? てかあの雰囲気のおかしい家はなんだ? 彼女をレイプしてた奴があの家に来て涙ながらに語って、でもナイフはすぐ置いたしマジで行動の理由が分からない。あといちいちワンシーンが長い。雰囲気作りのためだとは思うけど、その雰囲気を楽しめなかった自分にとっては不快感さえある冗長なシーンばかりだった。ずっと廊下を歩いてたりとか、父の死体を前に泣き続けるだけのシーンとか、意味が分からなかった。泣くっていうか叫ぶっていうか……「アーッ‼︎ …………アーッ‼︎ …………アーッ‼︎ …………アーッ‼︎」って、なにあれ。なんであんな散発的に叫ぶの??? 黒い箱が最初は触れば開いた(?)のにアダムが死んだ後のシーンでは触っても開かず、「大っ嫌い」と言って反応したのも意味不明。ここまで感想を書いて、視聴者にこういう体験をさせたかったのでは? とも思ったけど、これに今後2時間は使いたくないな。
ヒスパニックなミステリー
スペイン作品なのだが、なかなかこれが面白い構成となっている。プロット自体はそんなに斬新なモノではないのだが、でも所謂SFに於けるパラドックスを易々と超えてしまう辺りがラテン系のノリなのだろうか?何のことはない、自分が過去に戻って、その時の自分を消してしまえばいいという発想は、まぁ、日本では一寸幼稚なのだが、でもこういう発想も悪くはないと感じさせる展開ではある。ただ、一寸冗長なカットが多く、特に主人公家族が住んでいる現在アート的邸宅のシンメトリックな佇まいを多く挿入している部分は、何か暗喩的なプレゼンスで、解釈が必要なのだろうが自分にはサッパリ不明である。かなり極小に絞られたBGMや、殺害の際の唐突さとそれとは真逆の無音、そしてだからこそ効果的なのか、黒い箱(タイムマシーン)のCGに対応する効果音の不気味さに驚かされる。どうでもいいラノベ原作のショ○ベンアイドル主演の邦画よりも余程観る価値のある、秀逸な展開の作品である。
時間
山奥で暮らす右肘から下が無く義手を動かす練習をしている少女とその父親の前に怪しげな二人の姉弟が現れる中、森で見つけた不思議なキューブから少女が自筆の手紙を受け取り巻き起こる話。
あらすじをみないと良くわからないし、それを踏まえてみてもはっきりしないし、不穏な空気感と不思議な出来毎だけど20分ぐらいで終わりそうな話を淡々とタラタラと行ったり来たりで長くみせられたかんじ。
義手、犬、喋らない男の子等々、色々と思わせぶりなものも、特に意味なくただの設定の説明ぐらいの為のものだし、肩透かしな感じ。
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