「虚無」ザ・ヴォイド 鰹よろしさんの映画レビュー(感想・評価)
虚無
他人(ヒト)を救う力を持ちながら何よりも守りたかった愛娘を亡くしている医師(父親)。
夫婦にとって幸せや絆の象徴の1つだろう子宝に恵まれながらも、その命を死産により失ってしまった警察官と看護師夫婦。
カルト教団に妻(母)を殺されたことで、行き場の無い怒りで暴走する父親とそれに付き従う声を奪われた息子。
大きなお腹を抱えた年端もいかない少女は祖父に付き添われ診療に訪れている。
皆大切な誰かを失った者たちであり、ナニカが欠けている者たちである。
一番守りたかった命を守れなかった医師はその後赤の他人に対する医療にどのように従事できるのか。
自らの出産を失敗した看護師は、少女の出産にどんな気持ちで向き合えるのか。
警察官である父を持ち、自らもまた警察官となった主人公は常に比べられている様で、どこか劣等感を抱いている様に映る。
この劣等感はカルト教団に妻を殺された父子にもまた投影できる。
謂れの無い不安や恐怖、そして怒り...、決して埋めることのできないナニカを抱える者たち。
彼らに巣食う心の闇は、彼らの抱える混乱は物質世界から精神世界へと浸蝕したもの。物質世界における信じたくない、到底信じられるものではない事態によって精神世界へと植え付けられてしまったもの。
だとするのならば、それは逆の方向にも働かせることができるのではないか。マイナスな事象にしろ信じられないことが起きたということそれは即ち人智の及ばない事象詰まる所の奇跡の実証と言って良い。どんなことも起き得るのだと...
彼らの見舞われた惨事、それは彼らが精神世界で来している混沌の物質世界への投影だ...
「マレフィク 呪われた監獄」(2002)...「ATM」(2012)...「リバイアサンX 深海からの襲来」(2016)...「ザ・エクスペリメンター」(2017)...「黒い箱のアリス」(2017)...