「父と娘の金メダル」ダンガル きっと、つよくなる 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
父と娘の金メダル
今年はインド映画の当たり年!
『バーフバリ』に続いて、またまたメッチャメチャ面白い映画がやって来た!
実話に基づく、熱血スポ根×父娘愛ストーリー!
現役を引退したインドのレスリング王者、マハヴィル。
国際大会で金メダルの夢を息子に託すが、産まれてくるのは娘ばかり。
父の夢は夢と消え…。
そんなある日の事だった。
長女ギータと次女バビータが近所の男の子と喧嘩して、ボコボコにする。
マハヴィルは胸躍る。
これだ!娘たちをレスラーに…!
父娘二人三脚で、目指せ!夢の金メダル!…なのだが、最初からそうではなかった。
娘たちは自ら望んでレスラーになりたいのではなく、父の独断。…いや、もっとはっきり言っちゃうと、娘たちの意思などお構いナシ、無理強い。
娘たちにとっては、近所の男の子をボコボコにした罰?
父の特訓は超スパルタ。早朝からランニング、ハードな稽古…。
娘たちも年頃なのに、民族衣装は脱がされ、頭は丸坊主に。
少なからず反発するが、基本逆らう事は許されない。
父さん、やめて~~~!
そんな娘たちの声は届かず、星一徹ばりにシゴきにシゴきまくる。
そんな父のやり方は村中から批難される。
娘をレスラーにだって?
村の英雄から一転、変人扱い。
それはつまり、娘たちも学校でからかわれるという事。
特訓も辛いが、周りの嘲るような視線も辛い…。
しかし…
インドの女性は年頃になると、結婚して家庭に入るのが当たり前。
女性がそれ以外の場に立つなど、まず無い。
始まりはどうあれ、父が与えてくれた他とは違う道。
確かに端から見れば、イカレ親父かもしれない。
でも、何事も“初めて”は白い目で見られる。
娘たちの中で何かが変わり始める。闘争心に火が点く。
ここから本当に、父と娘たちの二人三脚。
父の特訓はさらに厳しくなり、娘たちは必死で食らい付いていく…。
長女の初試合。
結果的に言うと、健闘はしたものの、負けた。
さぞや父は厳しい言葉を投げ掛けると思いきや、父は娘の健闘を笑顔で称えた。
単なるイカレスパルタ親父ではない。
何より娘たちの力と可能性を信じている。
ここからこの父が、厳しくも常に娘たちを思う愛ある父親に見えてくる。
メキメキ実力を上げ、NSA(国立スポーツ・アカデミー)へ。
先に長女が入るが、思わぬ事態が生じる。
父の下を離れ、初めて手にした“自由”を謳歌する。丸坊主にさせられて以来久々に髪を伸ばし、化粧したり、NSAで出来た友達とショッピングしたり、年頃の女の子らしく。
かと言って、特訓はおろそかにはしていない。
NSAで新しい技や視野を広げ、自信が付く。
父のやり方は古臭い、と…。
父との間に確執が。まだ父の下で特訓を続ける次女とも言い合ってしまう…。
帰郷した際、特訓法の違いから対立、一試合する事に。
ここは見てて複雑な心境だった。
どっちにも負けて欲しくない。
父の言い分も分かるし、長女の言い分も分かる。
この試合、父が負けた。
ただ娘の方が強かったという訳ではない。確かに長女は実力が付き強くなったが、父も老いたのだ。
父を負かした事でさらに自信が付いた長女は、意気揚々と国際大会へ。
が…
負ける。しかも、無様に。
一勝も出来ない。
何で…? どうして…?
女性にレスリングは無理なのか…?
インドはレスリングで金メダルを獲る事は出来ないのか…?
NSAのコーチからは「国際大会には向いてない」とまで言われてしまう。
期待が失望。落胆。自信喪失。…
そんな時、長女が再び頼りにしたのは…。
長女を信じ、手を差し伸べたのは…。
言うまでもない。
ここからの展開は私如きの駄文ではなく、是非ともご自身の目で見て頂きたい。
本当に、白熱!興奮!感動!
胸奮え、熱くなる!
主演アーミル・カーンは、選手時代~引退後の初老を演じるに当たって、27㎏増減の肉体改造!
その役者魂に圧巻させられるが、それと同じくらい、長女ギータ役のファーティマー・サナーの奮闘も称えたい。
彼女が最も試合シーンが多く、全てガチ!
豪快な技、白熱&迫力の試合シーンは、本当に拳を握り締め、手に汗握る!
勿論、次女役も奮闘。
練習相手の従兄がユーモアをもたらす。
インド映画だけど、歌って踊るシーンは無いが、歌曲に彩られ、歌詞が娘たちの心境を表す。
♪やめて 父さん
♪まるで拷問 地獄
娘たちには気の毒だが、ここら辺がコミカルでもある。
ニテーシュ・ティワーリー監督の演出はちょっとご都合主義で、人物の心情の描き込みも浅い点もあるが、テンポよく、感動と興奮を一切中弛みする事無く魅せてくれる。
実話が基なので、オチは分かり切っている。
インドに女子レスリング・ブームをもたらしたという。
ラストの父のある台詞と、抱き合う父娘の姿こそ、金メダル以上。
これは、インドに於けるレスリングの歴史を変えた物語である。
偏見や決まり切った考えの社会やNSAとの闘いでもある。
女性が自分自身で道を切り開く闘いでもある。
父と娘の闘いでもある。
そして何より、
父親の夢を継ぐのは息子だけとは限らない。娘だって継ぎ、夢を実現させる事が出来る。
父はそんな娘たちを信じて疑わなかった。これっぽっちも。
父と娘の、信頼と絆と愛の金メダル。
本当に良かった!面白かった!
昨年は『哭声 コクソン』『お嬢さん』『アシュラ』と韓国映画を年間BEST級に選んだが、
今年は『バーフバリ』に本作とインド映画が年間BEST級になりそう!
そう!そう!!
正にそのとおり!
(俺の云いたいこと全部ゆうてくれてるやん!)
ありがとう!!
(もっと爆発的にヒットしてもええやんネェ)
今のところ自分の中で今年一番や
おもてます。