シルバー・グローブ 銀球でのレビュー・感想・評価
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監督は、アンジェイ・ズラウスキー。 ポーランド版『2001年宇宙の...
監督は、アンジェイ・ズラウスキー。
ポーランド版『2001年宇宙の旅』ともいわれるSF超大作だが、どちらかといえばアンジェイ・ズラウスキー版『DUNE』という方がよいだろう。
ポーランド政府の命令により政策が中止されたため全体の5分の1が失われ、欠損部分を現代の街並み映像に監督本人のナレーションで補う手法で完成。
例によって、わかりづらい部分が多々あるが、同監督作品では比較的わかりやすい方。面白い人には面白いはず。
概ね3部構成となっており、第一部
地球から銀星に到来した女性1人を含む4人の宇宙飛行士。
過酷な環境で生き延びた女性飛行士が出産。
2倍以上の速度で成育する惑星環境で、血縁の村組織が成立し、しぶとく生き延びた男性が「古の人」として崇め奉られる・・・
この第一部は、後の宇宙飛行士たちが回収した記録映像という形で描かれ、当初4人(のち1人)が胸に付けたPad型カメラの主観的映像。
なので、画面の揺れ、不安定なアングルなど、ズラウスキー的映像でも説得力がある。
この第一部が秀逸。
第一部の続き・・・
女性飛行士は船長との間の子を産んだ後、のち「古の人」と呼ばれる船員との間で何人もの子をもうけ、子たち間でも交配した結果、成長が早いため短期間で部族を成す。
独自の掟が出来、狭い海辺の地から沖合の土地を目指す者たちが出現し、新たに開拓を目指すが沖合の地は、文明が荒廃した鳥人間たちの地であり、「古の人」の一族の多くは殺されてしまう。
ここまでが第一部で、第一部の結末と第二部の冒頭が欠損している(未撮影か)ため、ナレーションで綴られる。
第二部。
それから数十年後、新たに1人の宇宙飛行士が飛来するが、「古の人」族は、地球でいうところの中世並みの文化・宗教を得ており、鳥人間族との抗争が続いていた。
新たな宇宙飛行士は、天から飛来したことで「神」と崇められる・・・
と『DUNE』に似た展開となる。
ただし饒舌な台詞は観念的で、過剰な舞台劇めいている。
神と崇められた男は、部族の巫女的女性を娶るが、彼女は「古の人」の最後の娘の子。
第一部の船長の子の末裔が族長となっているが、宗教家との間で権力闘争が続く。
また、鳥人間との抗争も激化。
「神と崇められた男」は苦悩の結果、鳥人間を殺すが、苦悩は深まる・・・
第二部の後半も失われており、「神と呼ばれる男」のロケットが丘に残っていることがナレーションで示される。
第三部。
「神と呼ばれる男」の故郷、地球の話。
彼は痴情のもつれから追放されたことが示され、彼を追放した男女と、第二部の続きがクロスカットで描かれる。
第三部の地球の女を演じるのは、『鉄の男』等のクリスチーヌ・ヤンダ。男女間で追放した男への葛藤の差が出、愛情が変化する。
一方、第二部の続きは、「神と呼ばれる男」が鳥人間制圧の先頭にたち、軍勢を率いての先頭が繰り広げられるが、残された民を宗教家が感化し、宗教家と船長の末裔による暗黒社会となる。
反対勢力は多数、文字通りの串刺しとなり、不幸の原因は「神と呼ばれる男」の長期の不在にありとされ、彼自身も十字架の磔刑に処せられる。
キリストのモチーフが使用され、第二部の真の終わりとなる。
第三部の結末は失われているが、冒頭に繋がる展開となり、円環型で物語は閉じられることがナレーションで語られる。
そして、街角のウインドウの中に語り部のズラウスキー監督の姿が映し出される(これが映画のラストカット)。
欠落部をナレーションで埋めることで、シルバー・グローブ神話と現代が地続きとなったわけだ。
歴史・社会・宗教の要素を盛り込んだ壮大なスケール、暴力的で過激な映像、溢れ出る観念的台詞、さらに「銀残し」手法で描かれるシルバー・グローブ映像。
わからないところは多いが、ズラウスキー作品の中でも傑出した作品といえるでしょう。
不完全な未完成
二人の宇宙飛行士と部族、不時着した宇宙飛行士たち、村を形成し"太古の人"として文明を築き、場面ごとの間に失われたフィルムを補うズラウスキーのナレーションが入り、最も難解な物語が始まり、理解出来ない事柄にイライラし、新たな場面から意表を突くロックが流れる違和感と、最も難解な物語に戻り、繋がり、「食人族」の成れの果てからのキリスト。
エンディングはズラウスキーが姿を見せ、物語としての終幕は映像では描かれない。
断片的な映像がテンポ良く進む代わりに理解する事が困難になり、中盤から置いて行かれてしまう状態が最後まで続く。
ズラウスキー、恐るべし、映画を観るのが怖くなる!?
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