「バイオグラフィー」ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
バイオグラフィー
第90回アカデミー賞で、主演男優賞と、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しました。
今作で取り上げたいことは、バイオグラフィーというジャンルについて。
この作品は、第二次世界大戦ごろのイギリスで国を率いて戦争を勝利に導いた総理大臣ウィンストンチャーチルのお話です。
これまでも、#ダンケルク や、#イミテーションゲーム #英国王のスピーチ などで取り上げられた時代と同じものです。それらに出てきた歴史的史実もたくさん出てくるので、続けて見ても、かなり面白い作品です!
そして、歴史上の人物について語るジャンルのことをバイオグラフィー(伝記)といいますね。
バイオグラフィーも映画のジャンルの中ではとても大きなもので、アカデミー賞常連のジャンルになっています。
しかし、失敗作も多いのも現実。
では
「その失敗作と映画賞受賞作の違いはなんなんでしょう?」
それは、私にとっては、ズバリ言ってその人物のキャラクターを絞りきることができるかということです。
みなさんも、たとえば、自分の家族や友人のバイオグラフィーを書こうと思って見ても、その人のキャラクターを一言で片付けることもできなければ、2時間の映画で収めることも不可能だと思います。なぜなら、その人にはいろんないいところ、悪いところがあるし、起きた出来事も一つではないからです。
それは、歴史的有名人であっても、ウィンストンチャーチルであっても同じこと。
映画賞受賞作はそのキャラクターの描き方が、2時間の映画を観る人のために作ることができているということです。
たとえば、今作でいうと、描かれているのは、1940年の5月、その1ヶ月で起きた出来事を描いています。
もちろん、この1ヶ月を描いた2時間の映画で、彼の人生のすべてがわかるわけではありません。むしろ、彼の人生全てを知ることが映画でいうバイオグラフィーの目的ではありません。
映画というのは必ず、作り手の意思が反映されているものです。その意思が反映されているのが、キャラクター。
起きた出来事、もしくはセリフは史実に基づいた実際のものかもしれませんが、キャラクターというのは、その人自身が決められるものでもなければ、全員が抱く印象が一緒だとは限りません。だから、そのキャラクターの描き方で映画の良し悪しは決まってくるのです。
じゃあ、今作はどうだったかというと、めちゃよかった。
#ゲイリーオールドマン の演技もしかり、#辻一弘 さんのメイクアップもしかり、撮影もしかり、脚本もしかり、すべてがとてもまとまっていました。
もっと具体的にいうと、ウィンストンチャーチルを政府内でいう異端児として描くことは、よくあることですが、そのなかに描かれるユーモアがとてもユニークでした。
何度も笑う部分が出てきますが、それが出てくることによって、ウィンストンチャーチルが悩んでいる時、真剣に考えている時、また誰かを助けようとしている時など、ユーモアが出てこないところの感情が色濃く描かれていました。
人を笑わせるというのはとても難しいことですが、イギリス映画特徴のダークな雰囲気な照明と、ウィンストンとともに動くようなカメラワークのギャップが、ユーモアさを引き出していたことがとても好き。
このように、キャラクターを上手く描くことができれば、そこからテーマや社会情勢を描くことが可能なのです。
映画は常にキャラクター。キャラクター。