「結果、勝ち戦だった」ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
結果、勝ち戦だった
原題は「DARKEST HOUR」、暗黒のとき。
ヒトラー率いるナチスドイツの勢いがすさまじく、本土侵略されるかどうかといった英国を描いた作品。
第二次世界大戦初期の1940年5月。
ナチスドイツの勢力はすさまじく、フランスも陥落寸前。
英国も本土上陸されるやいなやの瀬戸際で議会は紛糾に次ぐ紛糾。
戦時緊急内閣の首相として任命されたのはチャーチル。
与党の中でも嫌われ者(つまり野党側からは信を置かれている)だった彼の役割は、そもそも挙党一致体制をつくるだけつくって、あとは与党でも信任の厚い議員に任そうという思惑だった・・・
といったところから始まる物語で、就任早々、英国陸軍の大部分は仏国ダンケルクの海岸でドイツ軍に包囲され、絶対絶命のピンチに陥っている。
そして、内閣の中でも、ドイツとの間で平和条約を締結してソフトランディングの(つまり独軍の軍門に下る)決着をつけようとする者もいて、さて、どうすべきか・・・と展開する。
非人道的なナチスドイツの軍門に下るわけにはいかないが、徹底抗戦するのもどうか。
結果的にはダンケルクからの脱出戦が功を奏して、その後、連合国軍が第二次世界大戦では勝利するわけだが、それは結果論のようにも思える。
チャーチルの強烈な弁舌を真に受け、無謀な策を支持して、英国国民総火だるま状態になっていてもおかしくなかったわけで・・・と考えると、かなり背筋が寒くなる。
ま、非人道的なナチスドイツの軍門に下ってしまうよりはいいのかもしれないが。
それにしても、いま時分、こういう題材の映画が撮られるということは、かなりきな臭い世の中になったとしかいいようがない。
なお、チャーチルを演じるゲイリー・オールドマンは熱演、名演。
議場を大俯瞰から撮るオープニングから、監督ジョー・ライトの演出も熱が入っているが、入りすぎて、のべつ幕無しの音楽など、少々過剰な感じがしないでもない。