「アーロン・ソーキン初監督作は十分過ぎる出来」モリーズ・ゲーム ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)
アーロン・ソーキン初監督作は十分過ぎる出来
当代最高の脚本家アーロン・ソーキンが初監督作で描いたのはアメリカの精神。女と男の果てなき欲望、そこには大した理由はない。ちゃんとクリスマスに家族でディナーを楽しむ場面まで用意されているし、主人公モリーが文字通り、転けてもまた立ち上がるラストには熱くなった
犯罪者たるモリーに寄り添うスタンスは甘いのかもしれない。でも劇中それとなく言及されていたように、ウォール街の「胴元」は野放しだ。顧客を勝ち目の少ない賭けに参加させて、合法的に手数料を得ているばかりか、経済が破綻した時には知らん顔。それに比べればモリーは再び立ち上がるに値するはずだ
『ソーシャル・ネットワーク』でいうウィンクルボス兄弟、真の敵は奴らだ。そう考えるとソーキンのスタンスは一貫していると見ることができると思う。同作と『モリーズ・ゲーム』は構成もそっくりなのが面白い。でもラストで主人公を突き放してみせた前者の方が、余韻を残すのも確かだ
これまでソーキン脚本作品はフィンチャー、ボイルといった当代きってのビジュアリストが手がけてきた。それに比べると本作の画造りは平板なところもあるけど、初監督作としては十分だろう。ソーキン印の畳み掛けるダイアログは毎度素晴らしいし、これからも監督兼脚本路線でやってみてもいいのでは?
まあベストの形はソーキンの脚本を、ビジュアル的感覚に優れた別の監督が撮るのが一番なんだろうけど
ジェシカ・チャステインが良かった。『ゼロ・ダーク・サーティ』から続く「強い女性」路線の最先端。どの役でも時折見せる涙が絶妙やけど、そろそろ見せすぎな気はしている。常におっぱいを半分ぐらい出してるのも眼福。イドリス・エルバも渋い。この人は『パシフィック・リム』といい演説が似合う