「大事なことを僕はまだ知らないんだ」君の名前で僕を呼んで talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
大事なことを僕はまだ知らないんだ
こんなにいい映画だったんだ。エリオ(シャラメ)の動き、表情、台詞(オリヴァーの口真似も!)の一つ一つがその時を表していて、可愛い、笑えた、そしてどきどきしたり混乱したり苦しい気持ちが伝わってきた。背中にしょってる黄色いリュックは、エリオがまだ嘴が黄色い子鳥であることを示していた。
オープニングのクレジット映像で既に夢心地になってしまった。ヘレニズム(でいいのかな)古代ギリシャの美しい彫像の数々、隅っこに現代(80年代?)のものがこっそりと散りばめられている。映画の中で流れるピアノ曲は慎ましく美しかった。
イタリアが舞台でもどうせ英語ばかりの映画だろうとひねくれて、ずっと見ていなかった。だから見ることができてよかった。英語もイタリア語もフランス語も話されていたし、ドイツ語も書籍の音読だけどあった。どの言語かで登場人物の特性や関係性が自分なりのレベルでわかって面白かった。シャラメのギター&ピアノ演奏&楽譜見ながらの編曲姿、美しい。夏休暇のけだるさ、退屈、ワクワク感、色んな人との再会と面倒、太陽のジリジリ、水の気持ちよさ、涼しい木陰と空気、読書、終わりがくる切なさをシャラメが素晴らしく体現していた。
二人が互いの気持ちを確かめ合ってから立場が逆転するのがよかった。それがなければ、オリヴァーのことをいけ好かん!と思っただろう。オリヴァー演じるアーミー・ハマーがあまりに典型的な(「プロミシング・ヤング・ウーマン」に出てくるような)アメリカン男に見えたからだ。エリオのパパは全部わかっていた。パパが言うように、賢いエリオはこれから善き人としても成長するだろう。
少しでも多くの人がエリオの両親のようでありますように。
早く夏が来ないかなあ・・・
おまけ
エリオは英語もイタリア語もフランス語も話す。エリオはギターやピアノを素晴らしく演奏し、編曲をし、本をよく読み、思索する。エリオの友達にはイタリア人も居るしフランス人もいる。家に遊びにくるお客さんはイタリア人夫妻も居るしゲイのカップルもいる。たくさんのすべてがゆるやかに共存して軽やかに動いている。境界線を作らない、そのようにこの映画は作られている。だからこの映画を例えばBLものといった言葉で括ってしまうとしたらそれはあまりに狭くてもったいないな。
ステキなレビューですね。
エリオに寄り添ってくれるパパが良かったです。
全てが切なく美しいと思える作品でした。
「オペラ座の怪人」へのコメントと共感ありがとうございました。
高評価ばかりの中、あんなレビューをするのに勇気がいりましたが救われました笑