「later.」君の名前で僕を呼んで KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
later.
音楽と映像の使い方がとても上手くて、エリオの心情をよりストレートに肌で感じることができた。
些細なやり取りもテンポ良く面白く、だんだん盛り上がっていく二人に引っぱられるように物語にのめり込んでいった。
周りが誰も邪魔をしないのが良かった。
特に両親が絶妙な距離感で暖かく見守ってくれていたので本当に安心できたし、そんな家族の前でエリオは泣くことができて幸せだなとも思った。
父親の言葉、「辛さを忘れるために心を削らずに」「喜びも悲しみも蔑ろにせずに」「心は衰えていく」細かく正確に再現できないけど、現在過去未来のすべての自分の人生に於いて必要な言葉として受け取った。
無理に振り切らなくて良い。
例え傷付く結末になったとしても一時でも得られた幸せや喜びは本物でかけがえのないものだし、悲しい感情だって逃げずに思い切り悲しんでしまえば良いと。
あの時の父親の言葉があったからこその最後のエリオの表情なんだと思う。
オリヴァーからの知らせに傷付き堪えるように泣く彼の姿が胸に刺さりすぎて辛い。
私も大泣きしながら絶対に目を逸らさず観ないと、と凝視してしまった。
そのせいで未だにあの表情が瞼に焼き付いて離れない。特にあの振り返った時の一瞬の顔…
桃のシーンが好き。
結構最低なんだけどドキドキして堪らなかった。
オリヴァーが期待通りの行動をしていて笑えた。
二人とも何しても美しいしかっこよくて羨ましいな。
切ない一夏の恋を描いた作品として非常に面白かったんだけど、だからこそ本音を言ってしまえば納得いかないことも正直ある。
昇華し切れないわだかまりを発散する手段として近かったとはいえマルシアと寝ちゃうのか〜と。
マルシアは結構本気でエリオが好きだったみたいだし可哀想だったかな。しょうがないけど。
そしてオリヴァー。
列車での別れの際に「後で」って言わなかったな…と思っていたら。
どうして結婚しちゃうの…そこは急に会いに行って目が合って笑い合うところでしょう…とラブストーリーにはハッピーエンドを求める単細胞脳はどうしても思ってしまう。
彼の中での優先順位としてはそれが正解だったんだろうな。
たぶん、エリオの父親も程度に差はあれどきっと同じような選択をしていたんだろうな。
まさか終盤でエリオの父親とオリヴァーを重ねることになるとは思ってもみなかった。
北イタリアの何処かで繰り広げられる青春模様、切なくて切なくて泣きながら帰ったけど本当に面白い映画だった。観て良かった。
同性同士の恋愛をメインに描いた作品って、過剰にアーティスティックだったり逆に静かに静かに進んで暗くなったりしがちな気がしていて、それも好きなんだけど、今作品はちょうど良い日常感と非日常感のバランスがあり、リアルだけどポップでとても観やすく伝わりやすいつくりで好き。
やっぱり現実で恋愛をしたいもんだなあと思った。
思ってること全て書き残したくて長々と連ねてしまった。アプリコットジュース飲みたい。