「家族第一のパラダイム」デッドプール2 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
家族第一のパラダイム
ハリウッドのB級作品である。だから映画としての深みはないが、笑って観る分には十分である。この作品はよくできていて、アクションとエロとグロがほどよいバランスで配置されている。主人公が必ずしも正義の味方でないところがいい。観て面白いことは面白い。
登場人物はいずれも良心のタガが外れたように平気で残酷な行動をする。それはそうだろう、題名が「DeadPool」(死の池)だ。タイトルの由来はいろいろあるだろうが、イメージは赤い死体が掘った穴に大量に放り込まれ、あふれ出た血で池のようになっている感じ。主人公の真っ赤なコスチュームも同じイメージだ。
「フラッシュダンス」や「氷の微笑」のパロディ場面はそんなに笑えないが、忽那汐里は驚くほど可愛かった。これがハリウッド進出のきっかけとなるのかもしれない。
全体に家族第一というアメリカのパラダイムの中で笑いを取り、登場人物の行動原理を説明する作品で、哲学のないアメリカのB級映画はどうしてもその世界観から脱しない。
仮に、主要でない登場人物たちも主要人物と同様の人権を持つことを考えたら、実はこの映画はとんでもないジェノサイド(大量虐殺)映画なのだが、家族だけが唯一とする価値観からすれば、その他大勢がどれだけ死んでも知ったことじゃない。
こういう作品が笑って受け入れられる現代という時代が、自分のことも含めて恐ろしい。どこかの大統領がアメリカファーストと叫ぶように、人々はマイファミリーファーストと叫びつつ、時代に対して高を括っている気がする。