「疑似体験」ファースト・マン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
疑似体験
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随分昔だが下田のホテルのレストランで秋山(宇宙飛行士)夫妻と偶然居合わせたことがあった、彼が飛び立つ数か月前の夏休みシーズンだったと思う、夫妻は会話も無く黙々と食事をしていたのが印象的だった。
人類初の月面着陸の偉業なのだがチャゼル監督はありきたりのロマンや冒険譚ではなく歴史の傍観者的な冷めた視点で綴っている。主人公は危機に際しても終始冷静沈着、映画の中でも多くを語らない。船内の映像は無機的な計器、スイッチが所狭しと並び窓も小さく垣間見る宇宙もあえて美景を排しているようだ。視覚効果なのだろう、日常からは想像もできない熾烈なストレスを疑似体験させられた。
彼の並外れたストレス耐性は資質もあるのだろうが愛娘の死や同僚たちの死による極限の苦しみから備わったものと暗示される。帰還後の夫婦の再開シーンがガラス越しだったのは意味深だ、謝罪と寛容にも思えた。
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