「仕事人間の心のすきま。」ファースト・マン バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
仕事人間の心のすきま。
宇宙計画にまつわる実録映画である限り『ライトスタッフ』を避けて通ることはできないと思っているが、本作は『ライトスタッフ』からパイロット/宇宙飛行士の危険と隣り合わせの日々と、彼らを取り巻く家族のパートを抽出して、等身大の夫婦ドラマを削り出したような印象を受ける。
言いかえると『ライトスタッフ』から爽快な部分を根こそぎ取っ払うようなアプローチであり、決して万人向けのヒーロー譚にはなっていない。むしろ随所に顔を出すリアルな「夫婦あるある」の数々を前に、もっと違うものを観たかったのにという意見の人がいるのも理解できる。
しかし月着陸という壮大なプロジェクトに、立派なだけじゃない人間のドラマがあったのだという切り口が、思いがけずしっくりきた。ライアン・ゴズリングはこういう感情の表し方が不器用な人間を演じるのが本当に巧い。不器用な仕事人間映画として秀逸なんじゃないだろうか。グレーだがほんの少し光が射すようなラストシーンも大好きだ。
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