「孤独な映画」ファースト・マン フライトキャットさんの映画レビュー(感想・評価)
孤独な映画
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宇宙という壮大なテーマに対し、とても静かで淡々とした映画だった。本当に静かで、そして淡々としている。ただ、セッション・ララランドに活きていたチャゼル監督の音楽のセンスは今作からも十二分に伝わってきた。うるさくない程度だが効果的な音楽と、まったくの無音の対比にゾクゾクした。
個人的に一番印象に残ったのが、月に向かう主人公たちが亡くなった場合のスピーチを読み上げる場面。これ以前に地上での火災事故で主人公の友人が亡くなったことが描かれていた。宇宙に行くことがどれだけ困難で苦難に満ちたことなのか、ということが伝わるシーンなのだが、ここで使われた「水葬」という言葉にハッとした。当たり前のことだが、宇宙で死ねば死体は残らない。柩に死体を入れて水に流す水葬は、宇宙を流れるロケットのイメージに重なるように思う。
そして、帰りを待つ妻の元へは「計画は失敗した」という結果のみがかえってくるのだ。
結果的にニールアームストロングは人類初の月面着陸という栄光を成し遂げるのだが、彼が立った月にあったのは静と孤独と死だったのかと思うと、「 First Man」というタイトルには暗い影が滲むように感じられた。
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