「一体、何のために…」ファースト・マン とえさんの映画レビュー(感想・評価)
一体、何のために…
なんとも閉所恐怖症になりそうな、余りにも過酷で、息苦しくて怖い映画だった
人類が始めて月に行く映画なのに、解放されるどころか息苦しいなんて
夢と希望にあふれているはずの人類初の月旅行の現実は、恐怖に満ち溢れたものだった
この映画を観る前の私はワクワクしていた
アームストロング船長が「人類の偉大な一歩」を踏み出すまでに、どんな冒険をしたんだろうかと、「感動待ち」の状態だったからだった
しかし、現実は、私の思いとは180度違うものだった
人類で初めて月に降り立ったアームストロング船長は、感情を押し殺し、実験のような任務をひたすら遂行することを求められていた
常に、死の危険と隣り合わせで、いつしか笑うことさえも忘れてしまう
任務の後、無事に家に帰れるかさえもわからない毎日
そんなアームストロング船長の姿を観て、まるで、戦地に向かう兵士のようだなと思った
ただソ連に勝つために、危険な訓練を重ね「月面着陸」というゴールだけを目指す
そのために、平気で人命を犠牲にしていた当時の冷戦は、確かに「戦争状態」だったのだろう
そして、最後まで見終わった後「この月面着陸ミッションは本当に必要だったのか」と考えてしまった
現在では、月の利用価値がないことが分かり、人間が月へ行くことをやめてしまったけれど、本当はこの当時から、利用価値がないと分かっていたのではないだろうか
ただソ連に、共産主義に勝ちたかっただけではないのか
みんなが、ただJFKの夢を叶えるためだけに、彼の演説は正しかったと証明するために、命を犠牲にしても必死になって、ソ連と競っていただけではないのか
この当時の人たちの苦労や犠牲があって、今では宇宙旅行に行けるようになったのかもしれないが、人命を犠牲にしてまで、宇宙旅行というのは、必要なことなのだろうか
私はそこまでして、宇宙旅行が必要だとは思わない
なんだかやりきれない気分になってしまった作品だった