「月面でロケしたようなリアル」ファースト・マン むっしゅさんの映画レビュー(感想・評価)
月面でロケしたようなリアル
人類が月に降り立ってから50年。当時小学生だった私は、10年後、20年後には月に町ができ月旅行に行けるものだと思っていた。それが叶わなかった理由の一端がこの映画にある。
英雄として考えていたアームストロングの、実に人間的な面、それが痛いほど伝わってくる。さらにはその奥さんの心情。この映画を見ると英雄は簡単になれるものではない、いや決して「英雄」なんてひとことで語るものではない、ということがわかる。
現代から見ると、こんなにもアナログさを感じさせる、いまにも壊れそうな箱で宇宙に飛び出るなんてこと、恐ろしくて想像できない。それでも、政治による犠牲の上に様々なことが成し遂げられてゆく。
アームストロングをはじめとする宇宙飛行士たちの勇気、もちろんその家族やスタッフたちの思いも含め、驚くほどに重厚に描いている本作に感服する。
従前の飛んだ、降り立った、すごい!の成功物語では決してない、真に迫る人間ドラマとして描ききっている。
壮大なテーマにありながら全編通してのミニシアター映画のようなカメラワーク、ショットの数々も印象的。ドキュメンタリー映画のようでもある。臨場感たっぷりの着陸シーンはハラハラドキドキが止まらない。それを見届けたあとの物言わぬラストシーンがすべてを語る。非常に印象的で涙を禁じ得ない。