「全体的にもう一押し足りない」グリンチ 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
全体的にもう一押し足りない
ドクター・スースの「グリンチ」はもう言うまでもない有名な作品。映画化でいえばジム・キャリーの実写版があったけれど、今回はイルミネーションのアニメ化。うん。確かに「グリンチ」をアニメ映画化するなら、ディズニーやピクサーではなく、イルミネーションが正解だという気もする。イルミネーションの方がギャグに自由度があるし、気軽に楽しんでサクサクっと笑って観られる映画になるだろうと思った。そして実際の作品を見て・・・、絵柄も綺麗だしクリスマス気分も味わえたし、確かに気軽に楽しめてサクサクっと笑える映画であったことに違いはないのだけれど、後にはだいぶ物足りなさが残った。
おそらくすべてにおいて「もう一押し」が足りないのだと思う。グリンチがひねくれ者でクリスマスを憎んで仕方ないその描写もあと一押し足りないし、どうしてグリンチがクリスマスを憎むようになってしまったかの描写も一押し足りない。散りばめられたギャグももう一押し足りないし、グリンチが改心して町の人々と和解していく描写もやはり一押し足りない。ついでに92分というコンパクトな上映時間もあと一押しあってもいいのでは?という感じがする。
子供向けに分かりやすくコンパクトにしているとも言えるのでその辺は甘く解釈できるけど、個人的にはギャグがあまり冴えていなかったのが一番痛いような気がした。いつものイルミネーション・アニメと比べてもギャグの鮮度が低いというか、ただただグリンチがジタバタドタバタやるだけで、ありふれた笑いしかないのが最大の欠点ではないかと思う。そしてそれは、グリンチという人物が他人との交流を好まない人物であり、この映画においてもほとんどがグリンチの一人芝居であるため、他人との関りから生まれるギャグや喜劇というものを生み出せない設定だったからではないかと思う。辛うじて犬のマックスがいるけれどそれも限界がある。故にギャグのバリエーションが少なくなってしまったのかな?と思ったり。
それにしても、グリンチって一晩であんなすごい発明品を作り上げて見事に使いこなしてしまう天才だし、飼い犬のマックスはまた天才的に頭が良くて従順で人間より有能。この映画を見て真っ先に思ったことは「あの犬欲しい!」だったことはここだけの秘密。