「May the Force be with you! ただの難病物には収まらない、青春群像劇の傑作✨」ワンダー 君は太陽 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
May the Force be with you! ただの難病物には収まらない、青春群像劇の傑作✨
難病により人とは違う顔に生まれついた少年・オギー。初めて小学校に通うことになったオギーの苦悩と葛藤、そして成長が描かれたヒューマン・ドラマ。
監督/脚本は『ウォールフラワー』や『美女と野獣』(脚本)のスティーヴン・チョボスキー。
オギーの母親・イザベルを演じるのは『ノッティングヒルの恋人』『オーシャンズ』シリーズの、オスカー女優ジュリア・ロバーツ。
主人公の少年・オギーを演じるのは、『ルーム』『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』のジェイコブ・トレンブレイ。
オギーの父親・ネートを演じるのは、『ナイト ミュージアム』シリーズや『ミッドナイト・イン・パリ』のオーウェン・ウィルソン。
オギーと友情を育む少年、ジャック・ウィルを演じるのは、『ナチス第三の男』『サバービコン 仮面を被った町』のノア・ジュプ。
子供×難病という、サンマ×大根おろしくらい鉄板なテーマ。
正直なところ、こういう如何にもお涙頂戴な感動映画って気乗りしないのだけれど、いざ観てみたらまんまと感動させられてしまった…😭
てっきり、病気の子供が差別や偏見に苦しみながらも、最終的にはそれらを跳ね返して成長する映画かと思っていたのだが、予想が外れた。
いや、そういう映画であることには違いないんだけど、本作では主人公のオギーの他に、姉のヴィア、オギーの友達ジャック・ウィル、ヴィアの親友ミランダにも主観が移動する。
偏見に苦しむオギーに目を向けがちだけど、彼の周りの子供たちも、色々な悩みを抱えて苦しんでいるんだよ、という当たり前のことを、各々の立場にクローズアップする事で気付かせてくれる。
特に姉のヴィアのエピソードが泣かせる…😭
弟は太陽、自分はその周りの衛星だと自虐する彼女。
両親の手を焼かせないように、しっかり者に成長した彼女。
しかし、オギーに対する嫉妬心と、自分の代わりにオギーが病気になったのではないのかという疑惑から生じる罪悪感が彼女の内側には渦巻いていた。
そういう複雑な感情の入り混じった、1人の少女の心境が上手く描かれていたように思う。
余談だけど、ヴィアの彼氏のジャスティンが良いやつ過ぎる。あんなん男でも惚れるわ💕
4人の少年少女の群像劇で描く難病物、というユニークな構造。ただ、正直に言うとこれがあまり上手くいっていないようにも感じてしまった。
というのも、こういう群像劇なら4人がそれぞれ主人公であるべきだと思うのだけど、やっぱりオギーに重点が置かれ過ぎている。
些細な事でヴィアを遠ざけてしまったミランダ。
彼女のストーリーも非常に興味深いものであるのだが、物語に関する描写は他の3人に比べてあまりにも少ない。
彼女の物語がただのサイドストーリーに終始してしまっているのは勿体無いと思う。
オギーの親友ジャック・ウィルに関しても、もう少しなんとかならんかったものか。
オギーに対する友情は本物なのだが、いじめっ子の同調圧力に負けて陰口を叩いてしまう。
この感じは自分にも経験があり、非常に共感出来るポイントではある。
問題はジャックの心理描写がおざなりだった事。
例えば、自分が仲間外れにされるのを怖れるあまり、嫌々ながらもいじめっ子たちとつるんでしまうジャック・ウィルの姿を描いていれば彼に対する印象は変わったかも。
結構芯が強い少年として描かれていたので、彼が陰口を叩いているシーンを見た時、ただの嫌な奴にしか見えず、オギーと仲直りした後も「でもこいつ結構嫌なやつなんだよな」とうっすら思いながら鑑賞してしまった。
上級生に絡まれ、突き飛ばされた時に石で頭を打つという描写があったので、「あっ、これはジャック死ぬな…」と思ったら全然そんな事なかった。あのシーン何!?
一人一人が特別でかけがえの無いない主人公なんだ、という映画のメッセージ。
これをもっと力強くする為にも、ヴィアの演劇のエピソードを映画の最後に持ってくるべきだったと思う。
オギーは太陽、自分は月なんだと思い込んでいたヴィアに、初めて舞台の主役というスポットライトが当たる。
ヴィアもかけがえの無いない太陽なんだ、ということを強調する為にも、映画のラストは彼女のエピソードで幕を下ろすというのが良いんじゃあないでしょうか?
…あんな急なタイミングで「主役交代して!」って言われたら、自分なら新手のイジメかと思っちゃうな😅
細かいことを言えば、落ち込んだオギーに手を差し伸べたサマーや、自己主張は激しいが結構良い子のシャーロットにも着目して欲しかったし、いじめっ子であるジュリアンのエピソードはあまりにも投げっぱなしジャーマンだったと思う。
実はジュリアンも『スターウォーズ』に詳しいんだから、そこをもっと物語に組み込んでほしかった。
全10話くらいのテレビドラマとして制作して、1話ごとに主人公を交代しながら物語を紡いでいくというのが、この作品にはピッタリなのかも、とか思っちゃいました。
なんか文句ばっかり書いちゃったけど、かなり面白かったし、最後はがっつり泣いちゃいました😭
それぞれの少年少女たちに優しく寄り添った、ジュブナイル映画の傑作だと思います♪
いつの時代も映画は子供たちに勇気を与えてくれる。
全ての少年少女たちが、フォースと共にあらんことを✨