「想像できない世界は実現できないから:綺麗事上等」ワンダー 君は太陽 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
想像できない世界は実現できないから:綺麗事上等
はいはい天才子役による難病ものですな、わかってますよ。
と思っていたのです、見る前は。
でもおしゃれな感じするなあとも思って、ダメもとで見てみました。
ウォールフラワーの人が監督っていうのが決め手といえば決め手でした。
半信半疑でしたが、どうでしょう、予想していたお涙頂戴の難病ものではなく、
それどころかいたく気に入ってしまいました。
お姉ちゃん、親友、親友、お姉ちゃんの元友達、そして本人と
語り部が何度か変わります。
顔がどうしようもなく普通でない男の子であるオギーを巡って、
周りの人がどう思ったか、どう見方を変えたか、ということが
お話の骨子なのだと思います。
オギーの話であるんだけれども、オギーとの接し方が分からない
わたしたちの話でもあった、ということに胸を打たれました。
オギーの顔は変えられない。
変えられるのは、周りの人の見方だけ。
本当にそうなんですよね。
「ふつう」から離れすぎていてどう接していいかわからなくって、
ぎごちなかったり、そっけなくしたり、仲良くしなかったり、
あまつさえ嫌ったり、いじめてしまったり。
その言動の責任は、「ふつう」じゃない人ではなくて、
その人を「ふつう」でないと決めて遠ざける側にあるのだということです。
努力が必要なのは、「ふつう」の人の側なのです。
分かってはいたけれど、こうやって示してもらえると、
子どもにも(大人にも)ちゃんとわかる。
ありがたいことです。必要な示唆がもらえるということは。
はまりすぎて、原作買いましたよ。読みましたよ。
そしてスピンオフの小説さえも買いましたよ。
この映画の不満は、ミランダ(お姉ちゃんの元友達)が、
またヴィア(お姉ちゃん)と仲直りする部分の描写が甘いなってことだったのですが、これは原作通りなんですよ。
なのでこれ以上どうにもできないですね。
何ならミランダ部分は小説よりも映画のほうがよく描けている感じがしました。
あと、ジュリアンをあのままで終わらせて良いのかってことです。
もちろんあの学校に残ることになったならば、先生たち(お尻先生とか)は
きっとジュリアンへの教育をあきらめなかったと思うのですが、
モンペを両親にもつがゆえに、ただ決裂してしまったという結末が残念でした。
そのあたりが知りたくて原作を買ったわけです。
同じような疑問をお持ちの方は、スピンオフ作品『もうひとつのWONDER』の
第一章を読まれることをお勧めします。
正直なところ、私は映画よりも原作小説よりも、スピンオフでのジュリアンの
お話こそが、一番重要でないかと思いました。
あんまりそれを語ると、映画のレビューとは離れてしまうので、深入りしませんが、
好きになれない相手に対して、そう思ってしまう自分を見つめる、
何が自分をそうさせているのかをちゃんと知る。
これが多分一番大事なことなんだと思います。
ジュリアンはそれを自分で見つけたのです。
実際には、こんなにいい人ばかりに恵まれるということは少ないとか、
もっと大人になったら更につらいこともあるかもしれない、
所詮きれいごとでしかないじゃないか。
そう思われる向きがあるのは、分からなくもないです。
でも、こういう世界であるべきだっていう見本は見せてほしいじゃないですか。
大いなる建前をめざして、前進したいじゃないですか、すこしでも。
なので、イメージは持っていたほうがいいとおもうのです。
イメージできない世界を私たちは作ることが出来ないと思うからです。
よって、あえてきれいごとと言われることを承知で、こういう作品に仕上げたのだと思います。
原作にはない、チューバッカのたとえ面白かったです。
スターウォーズをちょっとでも知っていてよかったです。
ブラウン先生のいう、正しい方と親切な方のどちらかをするなら親切を選べって意味の格言ですが、わたしはちょっとわかりません。正しいことと親切は違うの?って思います。どう違うか説明してください、ブラウン先生!
あと、ミランダとジャックがすっげーーーーかわいくってかわいくってどうしようかと思いました。
ジャスティン(ヴィアの彼氏)とサマーもかわいかったです。
ジュリアロバーツママとオーウェンウィルソンパパもはまってました。
もちろん、オギーを演じたジェイコブには、心でスタオベしましたよ。
もうひとつ。ふつうかふつうでないかを離れて、わたしたち全てに言える示唆があったように思っています。
何かをがんばって、すっごく賞賛された経験は、未来で遭遇する辛い時期を支えてくれるってことです。
本当に辛い時期には、賞賛の経験を思い出せないかもしれないけど、ふとその記憶に触れた時、あなたを癒してくれます。ささやかですが、確実に、自分を誇らしく思えるでしょう。
これはほんとう。だと思います。
少なくともわたしは実体験として言えます。
子どもはいませんので、姪たちに見せたいわ、読ませたいわと思いましたが、
小3、小1ではちょっと難しいかなっていうのと、
こういうのを伯母がしゃしゃりでると両親(特に弟の配偶者)が嫌がるよねって
思って、いったん控えております。はい。