恋は雨上がりのようにのレビュー・感想・評価
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その出会いこそ求めていたもの
「ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。」とは、芥川龍之介の作品だ。有名すぎる「羅生門」の冒頭である。
思えば二人の出会いは雨の日で、あきらは雨がやむのを待っていた。
楽しかった、全力だった、夢中になれることだった陸上。それがぽっかり無くなったあきらは、外の雨と同じくらい、心もどしゃ降りの雨だ。
「羅生門」の下人は朱雀大路に1人きり、他には人影も見当たらない。
しかし、あきらには傘を差し出してくれる人がいた。
「雨がやむのを待つだけじゃ、つまらないでしょ?」
その男は温かいコーヒーと、温かい気遣いを差し出して、静かに去っていった。
「羅生門」は映画の中にもちらりと登場する。あきらが恋する店長の、夢の墓場のような部屋のなかに、良く読んでいるものなのか、趣のある古書のような「羅生門」が、すぐ手の届くところに置いてあった。
あきらに告白されて、1人部屋で紫煙をくゆらせる店長の、暗唱するのも「羅生門」である。
「云わばどうにもならないことを、どうにかしようとして、とりとめのない考えをたどりながら、さっきから朱雀大路にふる雨の音を、聞くともなしに聞いていたのである。」
雨音にふと思い出す一節、ただそれだけだったのかもしれないが、「羅生門」の下人がこの時とりとめもなく考えていたことは、「悪人になるか餓死するか」の二択だったことを思えば、店長の気持ちは少し自嘲的な気持ちだったのではないだろうか。
「橘さんと良い感じに付き合う」ということは、大人として許されざる行為であり、「橘さんの事を受け入れない」ということは、何にも無い、索漠とした人生に舞い戻るということなのだ、と。
彼の心もまた、雨模様である。
店長から見れば、あきらは若く、輝いていて、やりたいことを何でもできる、眩しい存在。
そんな彼女が自分に好意を持っているなんて、とてもじゃないが信じられない出来事だ。どんよりと垂れ込めた雨雲だらけの人生に見えた、太陽の微笑み。そんな感覚だろうか。
心の雨をほんの少し、遮ってくれた存在。そのほんの少しを、恋と思うか思わないか。二人の違いはそれだけ、のように思う。
店長に出逢わなければ、あきらは自分がなぜ走っていたのか思い出せなかっただろうし、あきらに出逢わなければ、店長は心の財産を思い出せなかっただろう。
ラストで何だか胸がじんと痺れて、柔らかな暖かさを感じるのは、二人の心に雨上がりの爽やかさを感じるからだ。
走る小松菜奈がスラッとして美しく、とても良い。競技用のユニフォームも良いけど、海辺で走るワンピース姿も、海に負けないくらいキラキラ輝いていてオッサンじゃなくても眩しすぎる。
黙っているときのツンとした迫力と、笑っているときのギャップも最高だ。ああ、恋してるんだな、としみじみ思う。
とても狭い世界の、小さな再生の物語を、少しコミカルに、情感たっぷりに描いていて、とても楽しめたね。
あったかくなりました!
良かった。
この作品は、とにかく主人公が恋に落ちるきっかけとなる場面がめちゃくちゃ素敵です。秀逸。確かに相手はオッサンだけど、あのタイミングであんな風に出会ったら、そりゃストンと落ちるかもねと思ってしまう。ここが弱いと誰も話について行けませんからね…。
ほんとただのファミレスで、ただ、静かで温かく、優しく、切ない。肌寒い雨の日に差し出された一杯のコーヒーの熱さが、じんわり体に染みていくのが分かるようです。タイトルがもつ軽やかさと、実際の恋の訪れがちゃんと重なります。作者のセンスが光ってます。
まぁ、主人公が母子家庭で、お父さんみたいな親しみの感情に近いのかなとも思うのですが、あれは確かに恋、だったと思いたい。
全体的に清涼感がすごくてまあ〜爽やかでした。ポカリのCMかと思った。
原作の方が、店長はもっと冴えなくて残念な感じで、生活感あります。もっと生々しいし、揺れる。でも原作は原作で、そういうところも良いんだな〜〜。あんな真面目な、人の良いオジサンが果たして現実にいるのだろうか、ということはあまり考えないでおこう笑
素晴らしい。二人とも良い演技!
主役二人の良さを生かしている
大泉洋ならではの、くすっと笑えるシーンが、中年男性のちょっとダメ感を表していて面白い。ちょっとダメでも、人には徹底的に優しい店長に恋心を抱く小松も、少し風変りでミステリアスな女子高生を好演。28歳も離れている女子高生に言い寄られても、普通の中年男性は困ってしまうだろう。当たり前の対応を大泉が相手を傷つけないように対応。途中から、最後の収束の仕方が見えてくるが、恋愛物の王道か。店長は小説を書きあげて、小松はライバルと対決して終わりかなって思っていたら、「やっぱり好き。メールしましょう」は意外でした。一人身の中年男性にも希望を持たせるような映画でした。しかし、なぜ陸上から離れたのか位の描写は描いてほしかったような。
原作漫画を読んでから実写版を視聴しました。 原作とイメージがそのま...
笑えるシーンが多い!
平坦な映画。
小松菜奈いい。
原作も読んでみたくなりますね。
原作は未読なのですが、アニメ版を鑑賞してみたところ良い作品だったので、こちらの実写版も観てみました。
キャスティングがとても良く、心の暖まる良い作品に仕上がっていました。
話の流れやエピソードは、中盤まではアニメも似たような感じだったので、多分、原作通りなのだと思います。
ただ途中からアニメには登場しないキャラクターが出てきたり、賛否両論あるかもしれませんが、終わり方もアニメよりもより分かり易くなっていたような気がします。
大泉洋さん演じた店長の近藤も小松菜奈さん演じるあきらも佳い感じでしたね。。
大泉洋さんと小松菜奈さん、この2人だからこそ作品の雰囲気を壊さずに実写化出来たのではないかと思いますが、周りを固める役者さんたちも容姿も勿論ですが、そのキャラクターもアニメそのままで、これも作品を成功に導いた要因ではないかと思います。
良い作品でしたので、機会があれば原作も読んでみようと思います。
みんな“アオハル!”
主人公のあきらはもちろんですが、店長も“アオハル”してますね。
あきらは、怪我で断念した(つもり)の陸上への未練を断ち切るかの如く店長への“道ならぬ恋”に突き進もうとしているんですが、みずきの登場により、やっぱり陸上への抑えきれない思いが湧き出してくる。“アオハル”やね。
店長は店長で、学生の頃から取り組んでいた小説への思いを断ち切れずに、いまも書き続けている。あきらの姿を見て、さらに小説への思いを強くしたのかもしれませんね。
でも、やっぱり、あきらの店長への思いはホンモノなのでしょうか?映画の最後は「お友達から・・・」というやつなんですかね?
大好きな映画である。
おじさんの自虐ネタに笑いが止まらない。「おじさん」「汚い」「臭い」「キモい」おじさん、そんなん言われちゃうんだよな、俺ら可哀想ちゃうん??
僕も、紛れもないオジサンなんだが、若い女性には恋愛に年齢を気にしないような子がレアにいることは事実で、僕は、友達くらいは普通になれるのではないかと、日頃に20代と接しながら思っている。
アキラが、まあ、純粋に真っ直ぐで、可愛らしいこと。映画だから、しっかり45歳は歯止めがあるが、実際は、いろいろな情事に及んでしまうのだろうとは推測される。店長の、アキラへの関わり方、「わかるわかる」と思い見た。
アキラに触発され、店長も奮起する。
「俺なんか何もいいとこない、おじさんなんだ」「そんなことない」
真っ直ぐで情熱的なアキラ、大人としてのアキラの将来や可能性を真剣に考える店長。心打たれる。
周囲取り囲む仲間もちょくちょく優しいのである。
僕、自身、小説を書いているが、重なる部分もあり。共感しながら見た。
ラスト
「友達ならメール!」
諦めないアキラ。微笑ましい。
小松菜奈を観たいひとのためにある映画
夢中になれるもの、諦めきれないコト。
邦画はあまり観ないのですが、年甲斐もなく何かキュンキュンしたくなったのと、ふとNetflixで出てきたので何となく観ました。
主演お二人の魅力が活かされた、爽やかな内容でした。大泉洋の好感度と清潔感、コミカルな感じがストーリーに貢献してるなと思いましたね。
物語の主軸は小松菜奈演じる主人公の再生と成長。走ることを断念せざるを得なかった彼女が大泉洋演じるバイト先の店長との出会いと恋を通じて、新たな一歩を踏み出していく。
横軸に店長との淡い恋がありますが、あくまで店長は大人としてのスタンスを堅持する。←ここがいいですね。ともすれば一線越えて年の差恋愛になりそうなものの、彼女に1番必要なのは何なのかを分かった上で、背中を押してあげる。悔しさや哀しさを味わってきたからこそ、不器用ながらも彼なりの優しさで未来ある若者をサポートする。それに徹する。
きっと、彼女が大人になった時、「いい出会いだったな」と振り返れるのではないでしょうか。
観る人の世代に依って感じ方は違うかも知れませんが、鑑賞後は雨上がりの空模様ように少し前向きになれる、そんな映画でした。
夢追い人達の純愛物語
本作のテーマは2点。歳の離れた男女の青春純愛物語。人生において夢を持ち追いかけることの大切さ。端的に言えば青春と夢である。爽やかなテーマなので、観終わってクリーンな余韻に浸ることができる。
主人公・橘あきら(小松菜奈)は、陸上競技の有力選手だったが、怪我で自分の夢を諦めてしまう。彼女は、偶然立ち寄ったファミレスでバイトを始め、45歳の店長・近藤正己(大泉洋)の包み込むような優しさに次第に惹かれていく。店長も、彼女の普通ではない態度が気になり、彼女に惹かれていくが・・・。
冒頭が出色。あきらの自らの夢に挑むような鋭い眼光と力強い疾走は、本作のテーマである青春と夢そのものであり、一気に作品世界に惹き込まれる。本作は、あきらの恋愛対象を45歳の男性にしたことが奏功し、青春映画という枠を超えている。青春時代を過ごした中年男性の視点が加わったことで青春に肩入れし過ぎず、冷静に青春を捉えている。
また、本作は、店長の自宅の描写で、まだ夢を追いかけ、諦めていない店長の心中を見事に表現している。ともに夢を失いかけているあきらと店長。そんな2人の純愛は、2人を覚醒させる。その後の2人の行動は、人生において大切なのは、夢を叶えることではなく、夢を持ち続け、諦めずに追い続けることだということが伝わってきて、胸が熱くなる。
主人公あきら役・小松菜奈の青春そのものを体現した演技が光る。不器用で脆いが一途で一生懸命な高校生を好演している。豊かな目の表情で喜怒哀楽を表現している。特に夢を諦めた時のやり場のない怒の演技が見事。対する大泉洋も、相変わらずの演技巧者振りで、現実生活に疲弊しながらも、夢を諦めずに追い求める店長の姿を表現している。
ラストシーン。今後の2人の関係性に含みを持たせた味のある台詞のやり取りが心地良い。本作は、歳の離れた男女の日々を丁寧に綴ることで、青春の素晴らしさ、夢を追いかけることの大切さを得心できる良作である。
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