私はウイスキーが大好きです。けれど、このエリスケイ島(トディー島)の島民たちのウイスキー愛を見よ!
WWⅡ当時のイギリスはスコッチ・ウイスキーについて、国内は配給とし、ほとんどを輸出に回していたようです。戦争は金がかかるから、外貨の獲得は必須でしょう。だがナチスが猛威をふるい、さらに輸出量を増やす必要に迫られたのか、国内へのウイスキーの配給が止まってしまう。まあ辛いですが、正直私はウイスキーがなくても全然生きていけると思います。けれどエリスケイ島は違いました。
島民たちにとっては、ウイスキーはまさに活力の源、心の酸素とでも言うべきものでした。ウイスキーがないと、生きる希望まで失われていく。娘の結婚も喜べない。ウイスキーがあれば結婚を許す、なんて言いがかりをつける始末。
そんな中、イギリスの貨物船「SSポリティシャン号」が島の沖で座礁したとの情報が入ります。この船はリバプールを出港しニューヨークへ向かうところで、約26万本のウイスキーやピアノを積んでいました。
瞬く間に情報は島中に広がり、夜も更けているなにすぐさま家を出てぞろぞろと海岸へ集まりボートに乗り込む島民たち。さっきまでの活力を失っていた人々の姿はありません。このシーンはもうとてもワクワクしましたね。
力を失っていた人々が、何かに動員されるのでなく、一人一人の内から沸き出る力によって団結して動く場面。まるで『進撃の巨人』においてミカサが巨人をなぎ倒して、「私は強い。みんな残念だ。」的な謎日本語の発破をかけて、訓練兵たちの目に希望が宿るシーンのように。ちょっと違うか。
みなが心を合わせ、一つの目標に向かって協力する時、人間というのは本当に強いですよね。それが「ウイスキーが飲みたい」だとは。
この団結は本土の税務官的な人がウイスキーの没収にくる終盤でも遺憾なく発揮されましたね。生け垣の隙間や屋根の上の雨どいに隠し、海辺にあった大量の箱を素早く移動させる手際は、『オーシャンズ11』かな?みたいな。あれだけ大人数で誰もヘマをやらないというのは、一人一人が自発に動いて協力する時、人々の知恵はかけ算となって大きな力を生むというのがわかりますね。民主主義が真に機能しそうだなと思いました。
実話に基づいているとはいえ、脚色もあるでしょう。けれどエリスケイ島には今でも「SSポリティシャン」というバーがあるそうです。だいぶなめてて、最高にクールだし、そんな人々のいる島なら、映画みたいなことがあった気がしてきますね。やはりコンプトン・マッケンジーの原作『Whisky Galore!』を読まねば。
ウイスキーの銘柄について、映画内に出てくるのは全て実在しない銘柄です。実際はホワイトホースとか、デュワーズホワイトラベルとかだったそうで、我が家にも普通に置いております。近所のリカマンでいつでも買えるます。
けれど島民たちの、奇跡と努力により手に入れた一杯はどれほど美味しかったのだろう、と思いを馳せるところです。
起こるかも知れないやり取り
友人「イギリスからニューヨークに向かっていた船が事故を起こして沈んじゃう、名作映画のタイトルなんだっけ?」
私「お、ド忘れした?いやあれは名作だね。あれほどの(ウイスキー)愛はなかなかない…」