「高校時代のいろいろな痛さを背負った俳優たちのみずみずしい演技が印象的な一作」レディ・バード yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
高校時代のいろいろな痛さを背負った俳優たちのみずみずしい演技が印象的な一作
「わたしのことは”レディ・バード”と呼んで」と堂々と言っちゃえるほどに全力で思春期の痛みを引き受けようとする(実際冒頭から痛い目に遭ってるし)クリスティンを演じるしアーシャ・ローナンの演技は、実年齢としては設定よりもちょっと上であるにもかかわらず、ある種の痛さを含んだ瑞々しさを湛えています。
3年後に本作に続いてガーウィグ監督と組んだ『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』(2020)の若々しくもあるが円熟味の増した演技と比較すると、演技の若さにくらくらするほどに。
本作以降、美形だけど穏やかで高貴な人格者を演じることが多いティモシー・シャラメが、ある意味鼻持ちならない若者を演じていて、ここにも時代を感じたり(といってもたった数年間の差なんだけど)。
ケリー・ライカート監督作品『ウェンディ&ルーシー』(2021)も手掛けることになることになる撮影監督、サム・レビの映像は自然主義的だけど非常に繊細で、前述の『ストーリー・オブ・マイライフ』の絵画のような画調(撮影監督ヨリック・ル・ソー)とはまた異なった美しさです。
主演俳優たちのその後の活躍を知りつつ本作を鑑賞するとなかなか感慨深いものがありますが(クリスティンの友人ジュリーを演じたビーニー・フェルドスタインは、本作の印象が非常に強かったのか、以降の役どころの方向性がちょっと固定された感があるけど)、本作のレディ・バードと重なり合うような、痛みも顧みずひた走る作風だったガーウィグ監督が、『バービー』(2023)において辛辣だけど洒脱な語り口を駆使するに至ったことが最大の驚き!
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