日日是好日のレビュー・感想・評価
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タイトルなし
主人公の20歳からの二十年間を茶道の習い事を通して淡々と描いている。
茶道の稽古で感じたことを綴ったエッセイを原作に、
よく一本の映画に仕立てあげたものだ。
映画のほとんどは稽古場の茶室が舞台で、
四季の移ろい、時の経過を庭の風景や茶菓子、掛軸などのカットで現す。
それらのカットは、黒木華の静かな語りによって説明される出来事による主人公の心情に重なる。
大森立嗣作品としては新境地と言えるのではないだろうか。
樹木希林の演技はいつものとおり、独特の間合いで微かな笑いを誘いながらも、説得力がある。
あの人が演じると、小豆を煮る様子も、茶道の所作も、本物のように感じる。
地味な顔立ちの黒木華に対して、多部未華子はくっきりとした顔で対比が明確だ。
フェリーニの「道」が例えに使われているが、悶々とする黒木華演じる典子に、典子にとっての茶道は「道」みたいなのもじゃないかと多部未華子演じる美智子が言う。
冒頭、典子と美智子は仲良くないのかと思ったけれど、美智子は物事がよく見えていて、時に典子の迷いを晴らす役割だった。
そして、典子はそんな美智子を認めている関係。
鶴見辰吾が、静かに暖かく娘を見まもっている父親を好演している。
聴く映画
2018年度ベストムービー!
"茶の道"に興味を持ちました…自分でもやってみたいなぁ…あんな優しい先生が教えてくれるなら(笑)
*究極の様式美であることの意味が、あまりにも深いと感じざるを得ない茶の心の大らかさ…感動しました!
*雨のシーンが印象的で、ちょっと鳥肌立ちました…。
*とても分かりやすい映画です。
静寂に包まれながら淡々と
四季折々、静寂に包まれながら、長く続く人生を、茶道に反映させて描かれる作品の意図は明確に捉えることはできたけれど、如何せん、茶道や時候に疎い自分では作品の中に込められている真の思いなど感じ取ることなどできるわけなく、目の前に展開する美しい映像をただ漫然と眺めているに過ぎなかった。
力が入っていない樹木希林はお茶の先生にか見えなくて凄いな~、とか、学生の黒木華とその友達はどう見ても社会人にしか見えなかったし着物の黒木華のほうが自然で凄くいいな~、とか、そんな表面的なところでしか作品を楽しんでいなかったような気がする。ついでにいうと、不自然に泣き叫ぶ黒木華の演出は嫌だったな~。
作品の本質を見いだすことができれば、至高の映画のような気がする、自分にとってはそうでなかったけれど…
時間の流れ
この作品を映画化するとなったきっかけは何だったのだろう。と観ながら思った。原作を読んでいないけれど、物語に起伏がないので音と役者で作り込んだ感じがする。
だからこその黒木華であり、樹木希林だったのだという感じ。多分ただ普通になぞると「映画にする」ことが分からなくなりそうな題材を画にしてみせる。所作。台詞。演技の比重がものすごく高い。
世の中が全く描かれないまま茶の世界が続き、やや唐突に登場人物のエピソードが全部語りで入るというのは、この役者陣だからこそ保つことのできた緊張と弛緩、がなければ成り立たないのではないか。
個人的にはもう少し背景を描き込んでも良いかな、とは思ったが、おそらく時間の緩やかな映画の流れ、を重視した結果で、それは成功していると思います。
普段見ない世界を見るという意味でも良い映画。
樹木希林さんはやはり佇まいだけで素晴らしいな、と思いました。場を変えられる空気を持っている。
『樹木希林』貴女は偉大です。
作品と呼ぶに相応しい映画
久しぶりに「作品」と呼ぶに相応しい映画を観ました。第一印象は必要最低限に奏でられている音楽。テーマは茶道ですが、凄く音にこだわって作っているなと感じます。ほぼ自然音を活かした構成はゴマかしがききません。劇場で観ているこっちも咳払い一つが目立ってしまう空間に「久しぶりにこんな静かな映画みたな」と。。。ごく限られた空間、限られた登場人物のみで一見単調に感じますが微笑ましいシーン、悲しいシーンと演じる分けるキャストの演技力も素晴らしく、しっかり入り込める作品です。必要?とも思えるシーンもその意味が分かった時にふと気付かされます。冒頭より語られるフェリーニの「道」も観てみたくなります。
日日是好日
節目節目のお稽古や茶事が、同じトーンで描かれる。黒木華さんの演じる典子の周りで起こる悲しい出来事も、楽しい出来事も、樹木希林さん演じる武田先生にまつわるお師匠さんのお話もだ。日日是好日だからだ。
どんな日もみんな良い日ではない。悲しい思い出の日もある、つらく立ち止まってしまう時もある。立ち直れないと思う時もある。でも、人はそれを静かに乗り越えて、良い日の思い出に変えていくのだ。
武田先生は、さしずめゆっくり流れる大きな川で、典子は紆余曲折ありながら、大きな川に合流しそうな予感だ。
日日是好日は、茶の湯と人の人生を重ねて描かれた作品だ。
途中でやめたっていいじゃない。美味しいお茶を飲みに来ればいいじゃない。ダルマの掛け軸は、勝利を意味するのだという。でも、七転び八起きの意味もあるのだ。そう、失敗してもいいじゃない。また、やり直せばいいじゃない。そして、8度目にでも日日是好日になれば良いのだ。
樹木希林さんが亡くなられた直後に公開された作品だが、また、映画で会えるじゃない、と言ってるようにも聞こえた。
☆☆☆★★★ 少しだけ加筆・改訂しました。 自分探しの旅は、人生に...
☆☆☆★★★
少しだけ加筆・改訂しました。
自分探しの旅は、人生に於ける最大のテーマでも有る。
「何故?どうして?」
お茶の作法に関して、何かとその理由を求めたがるモノ。
それに対して、樹木希林演じる武田先生は「そうゆうものなのよ!」…と言う。
原作であるエッセイは、とても読みやすく。我々の様な、多くの人がお茶に抱く《堅っ苦しい》とゆうイメージを変えてくれる良エッセイです。
人間には個性が有る。何を行なうにも直ぐにコツを掴み、そつなくこなす人もいれば。逆に覚えが悪く。なかなか身に付かない人も居る。
黒木華演じる典子はまさに後者。
自然を感じ、音を感じ、己れの五感をフル回転させて自然と一体化するお茶の世界。その世界に彼女は足を踏み入れる。
或る意味では、自分の居場所を探し続けている様に見える典子。呑み込みが悪く、元々が好きで始めた訳では無いからなのか?なかなか身に付いてはくれない。
そんな彼女ではあったが。亀の歩みの如く進んで行く事で、心の中での何かが変わり始め。少しずつ自分らしさを出せる様になって行く。
お茶が始まった頃は、この先この人といつ再会出来るのか分からない。だからこれが最後と思いながら、心を込めて相手にお茶を振るまう。
その真髄を知る事で、典子は人としての成長を遂げて行く。
延々と続く生活の営みの間には、生涯続いて行く自分探しの旅。
静かに抑制された画面。必要最低限に奏でられる音楽。自然音を活かし。季節の移り変わりを軸にし、延々と続いて行く自然との一体感。それらを心で受け止め、全身に行き渡る事で産まれる自然との一体感。
一見無駄とも思えるモノでも、その意味が分かった時に感じる心の豊かさを始め、極めて日本的な画に収まった中に存在する宇宙的な拡がり。
干支の茶碗のエピソード等は、エッセイを読んでいた時よりもその意味が感じ取れ。思わず涙腺が崩壊しそうになってしまったほど。
『ゲルマニウムの夜』や、昨年度の『光』の監督だけに。どんな作品になっているのか?気になってはいたが。予想外に原作エッセイの良さを損なわずにそのまま映画化。そう言えば、『セトウツミ』もこの監督だったなあ〜(´ー`)
エッセイを読んでいて思った事を2つ。
若い2人が初めて先生に連れて行かれた時の場面。
読んでいても面白い場面でした。特に映画でも描かれていた、誰も【亭主】をやりたがらない。
その時に【亭主】を演じたご婦人。此方はお茶の世界には疎いので、あくまでも想像だけですが。おそらくは名のあるお茶の先生なのでしょうね。
実はこの場面。エッセイを読みながら、草笛光子を想像して読んでいました。
そしてもう一つは樹木希林。
(映画化は知っていたのもあり)先生役は確かに樹木希林しかあり得ないと思った。
そんな樹木希林を、もうこの先スクリーンで観る事が出来なくなる時が遂に来るとは…。
しかしあの樹木希林ですからねえ〜。
この作品での鳥の鳴き声で有ったり。水の音で有ったり。風の音で有ったり、雨の音で有ったり…と。自然なままふっと思い出す如くに別の作品を観ている時に。「まあ〜まあ〜まあ〜」…と眺めているスクリーンから。ひょっこりと顔を出して来そうな感じがしそうだ!
2018年10月16日 TOHOシネマズ西新井/スクリーン2
横浜三渓園の茶室に行ってみたい
日日是好日
心が洗われる映画
ほっこりした
「ほっこりした」というのが、観終わってすぐの感覚でした。
森下典子さんの24年間のお茶体験&半生を綴ったエッセイを映画化。
20歳の大学生から44歳社会人まで、主人公女性を黒木華が好演。
エッセイが元だけに、ちょっとしたエピソードはあっても、全体を貫く大きなストーリーがあるわけではありません。
大事件が起きて解決したり、大恋愛からの結婚だったりといった、うねりはありません。
日本の四季折々の景色に沿って、穏やかで優しい時間と景色が重ねられていき、主人公の歳も重なっていきます。
茶道を通じた女性の自己の確立というか、自分探しというか。
年齢的な成長というよりは、人としての心の在り方が豊かになっていく様を描いています。
その主人公の姿は、私を癒してくれ、心が温まったような。
私は茶道に関する知識は全然ありませんでしたが、茶道っていいなと思わせてくれました。
そして、妙な幸福感に包まれた気がしました。
また、なんといってもこの映画の肝は、先日亡くなった樹木希林さんです。
主人公の悩みや苦しみに対し、言葉で具体的回答を出すのではなく、お茶とさりげない心遣い、立ち居振る舞いで導く茶道の先生という、存在感が必要で、難しくも重要な役を演じ切っていました。
亡くなったのは本当にもったいと改めて思いました。
追悼 樹木希林
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