劇場公開日 2018年10月13日

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「考える前に、先人の知恵にゆだねる」日日是好日 らいぴゅうさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0考える前に、先人の知恵にゆだねる

2023年9月16日
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知的

幸せ

これは原作がでたときに、
本屋さんで手にとってひきこまれて
その場でほとんど読んでしまい、
その後も心に残っていた本なので、
今回の映画化は
とてもたのしみだった。

形をくりかえして心を入れる。
それは、先生もそうとしか
教えようがないのだと思う。

私は学生時代、能楽を
やっていたけれど、
舞や謡などは理屈抜きに繰り返して
覚えるしかない。

自然に動けるようになってはじめて
自分なりの解釈などを
すこしづつ入れられるようになる。

その頃茶道を習っていて、
能の舞の姿勢や足運びと、
お茶のお運びの姿勢が
よく似てることに感動した。

あるとき、ふっ、と
腑に落ちる瞬間がある。
もちろん、全てではないけど、
典子が掛軸をみて滝をかんじたように、
水や雨の音をききわけたように。

それは不思議な快感だ。
そしてそれは、無心な繰り返しの中で
初めて得られる。

「こんなことしてなんの意味が
あるんだろう」とか、
「何の役に立つんだろう」
という前に
素直に繰り返す姿勢は美しい。

「稽古」とは古いことをなぞることだ。
ひたすら体に覚えこませる。
そうしてはじめて見えてくることがある。

まず形を作って、そこに心を入れる
自分が、自分が、という個性の主張、
自由という言葉に
かえって縛られてやしないか。

我、というのは尖った形だ。
尖ったところをすこしづつ
丸くしていけば動きやすくなり、
色々なものが
見えてくるのかもしれない。

茶室は狭いけれど、
精神を解き放つことができれば、
大いなる宇宙である。

人智を超えた大きな営みの流れに、
自分を合わせることができるのかも
しれない。

心静か、ということは
なんと幸せなことか。

らいぴゅう