劇場公開日 2018年10月13日

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「タイトルの本当の意味が明かされ、理解されたときに、私達には感動と共にカタルシスがもたらされます」日日是好日 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0タイトルの本当の意味が明かされ、理解されたときに、私達には感動と共にカタルシスがもたらされます

2020年8月28日
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鑑賞方法:DVD/BD

素晴らしい映画に出会えた幸せを感じました
タイトルの意味を序盤に問いかけられます
そして冒頭いきなり豪速球でフェリーニの道を提示します
本作を見終わった時、私達にはその意味が感動とカタルシスを伴って伝わっているのです

冒頭の道が訳わからないという台詞と、腰越の浜でザンパノ!ザンパノ!とふざけているシーンと、終盤の強く降りしきる雨の中、同じ浜でありがとうござまーす!と泣きはらしながら何度も叫ぶシーン
それらが父の死によって一本の線に繋がります

その時私達のそれぞれの胸中で、フェリーニの道の終盤で渚に泣き伏せるザンパノの映像が、その感動の記憶と共に再生されているのです
それが感動の梃子となって、より一層大きく心を揺り動かされるのです

フェリーニの道を補助線として援用している凄まじい演出の計算です

そしてタイトルの本当の意味が明かされ、理解されたときに、私達には感動と共にカタルシスがもたらされます

1973年生まれの女性
バブル崩壊と共に就職氷河期に一番最初にぶち当たった世代
彼女達がそのような世相のなかで苦闘して生きてきた25年

その長い苦しみに満ちた年月が、一気に晴れ渡っていく、そのカタルシスなのです

稀代の名優樹木希林
次の世代を背負うと期待を集める黒木華、
そして多部未華子
日本映画の継承でもあったと思います

多部未華子との対比によって黒木華のキャラクターを最大限に引き出した配役は本当に見事だったと思います
それで?という重大なセリフは本作のテーマの一角を成すものでした

撮影、照明、録音の優秀さ、見事な仕事ぶり
それこそが本作を成功に導いた影の功労者であったと思います

希にみる傑作です!
長く時間をかけて意味が分かっていく映画かも知れません

あき240