「『今ここで』を感じること」日日是好日 kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
『今ここで』を感じること
とんでもなく濃密な映画だと感じました。凄い観応えだった!
静謐な映画だからこそ、目を離すことができない。いや、この映画を隅々まで味わいたい!と思わせるモノがありました。
目の前の音を感じ、観て感じ、触感や温度を感じるお茶の世界が描かれていたからこそ、そう感じたのかしれません。
意識を集中し、その瞬間瞬間を丁寧に感じることは、なんと豊かなことなのだろうか。素晴らしかったです。
黒木華演じる典子の24年を描いた映画でした。そのほとんどを茶室の描写に当てているにも関わらず、彼女の成長や変化がバッチリ描かれていました。
また、黒木華がすごい。その時その時の心の状態がちゃんと外に現れていて、これもビックリしました。所謂達者な役者とはちょっと次元が違う印象です。
典子はお茶が好きなのかは不明ですが、典子はお茶を必要としているのですよね。支えと言えるかもしれませんが、もっと的確な言葉がありそう。典子はお茶とともに人生を歩むことが運命づけられているような印象です。
典子のエピソードは基本サラっと描かれてますが、父との物語はさすがに胸に刺さりました。お父さんを演じた鶴見辰吾も素敵でした。あと、『セクシーは気品に宿る(ただしラテン系セクシーは除く)』を持論としている私にとって、本作の鶴田真由はド真ん中でした。めちゃ艶っぽかったです。
しかし、お茶は豊かですね!普通ならば通り過ぎるモノをキャッチして、味わう。茶室の造りや謎の儀式性はそのためにあるんじゃないか、なんて感じてます。
そんな風に理屈っぽく考えると武田先生に怒られそうですが、水とお湯の音は聞き分けられましたぜ!私の耳には、水はキーンでお湯はトロッ、でした。
武田先生は樹木希林意外はあり得ないですね。彼女の訃報を聞いた時は、「あんな妖怪みたいなバーさんも死んじまうんだなぁ」くらいにしか思わなかったのですが、本作を観て、もうこの世に彼女がいないと思うととてつもなく悲しくなりました。鑑賞後に、特に実感してます。
ただ、本作には間に合ってくださり、とてもありがたいとも感じてます。本作で改めて樹木希林のバーさんに出会え、何かを感じることができ、嬉しい気持ちになっています。