「タイトルなし」日日是好日 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
主人公の20歳からの二十年間を茶道の習い事を通して淡々と描いている。
茶道の稽古で感じたことを綴ったエッセイを原作に、
よく一本の映画に仕立てあげたものだ。
映画のほとんどは稽古場の茶室が舞台で、
四季の移ろい、時の経過を庭の風景や茶菓子、掛軸などのカットで現す。
それらのカットは、黒木華の静かな語りによって説明される出来事による主人公の心情に重なる。
大森立嗣作品としては新境地と言えるのではないだろうか。
樹木希林の演技はいつものとおり、独特の間合いで微かな笑いを誘いながらも、説得力がある。
あの人が演じると、小豆を煮る様子も、茶道の所作も、本物のように感じる。
地味な顔立ちの黒木華に対して、多部未華子はくっきりとした顔で対比が明確だ。
フェリーニの「道」が例えに使われているが、悶々とする黒木華演じる典子に、典子にとっての茶道は「道」みたいなのもじゃないかと多部未華子演じる美智子が言う。
冒頭、典子と美智子は仲良くないのかと思ったけれど、美智子は物事がよく見えていて、時に典子の迷いを晴らす役割だった。
そして、典子はそんな美智子を認めている関係。
鶴見辰吾が、静かに暖かく娘を見まもっている父親を好演している。
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