劇場公開日 2018年2月24日

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「それでも歩き続けることの力強さ」ナチュラルウーマン ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5それでも歩き続けることの力強さ

2018年3月12日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

マリーナは歩く。風が吹こうが、雨が降ろうが、彼女は歩き続ける。カメラは彼女を追い続ける。時に後ろから、時に正面から、時には側方から…。

トランスジェンダーに対する、過剰な演出は最低限に抑えているが、遠巻きに彼女を見る世間の人々の姿にリアリティが生まれる。辛辣な言葉も、オブラートに包んだ表現も、主張の本質は変わっていない。どうして世の中は自分と異なる者に対し、これほどまでに排他的なのか?かくいう自分だって価値観の違う人に攻撃的な態度をとってしまうこともある。人とは実に愚かな生き物である。

しかし、どんなに差別的な扱いを受けようと、どんなに酷い言葉を浴びせられようとも、彼女は決して乱暴な言葉で言い返さない。内に秘めた怒りを抑えながら、溢れ出そうな涙をこらえながら、一人の人間として歩き続ける。それが彼女の強さであり、最大の自己主張なのだと思えてくる。

風が強く吹き付ける、雨が強く打ち付ける、けれども、時に暖かな日差しや美しい夕焼けが彼女を照らすからこそ、この物語の向かう結末に一抹の希望を感じられずにいられない。物語の後半、彼女は遂に涙をこぼす。愛する者を失った哀しさか、それとも自分の在り方が正しかったという安堵感か。恐らくは、その両方が入り交じった感情だろう。そのことを表現するかのようなラストの歌唱シーン。穏やかな感情を歌い上げる彼女の声がいつまでも耳に残る。

Ao-aO